マルチメディア2
5月 14日 16:40〜17:40(第1会場) 【 司会 】 辺見 弘 (国立病院東京災害医療センター) 渡辺 淑子 (杏林大学高度救命救急センター) |
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コメンテーター |
安瀬 正紀
(横浜市立大学附属浦舟病院熱傷センター)
林 さつ子 (東京女子医科大学熱傷ユニット) |
演題番号:M6 | 効果的な介入が図れなかった広範囲熱傷後の患者の一例 −危機的状況にある患者の援助を通して |
大久保 初美、三ツ井 裕紀子、田辺 幸子、宮城 領子 | |
聖マリアンナ医科大学病院看護部 | |
【はじめに】 重傷熱傷患者の治療が進歩する一方、熱傷により外観の変化を生じた患者は、社会復帰や、より良い状態を目指して、繰り返し手術を受けることが多い。我々の施設での手術は、入院後1週間以内に行われることが多く、短時間で患者の現状を把握し、術後の方向性に対してアセスメントを行い、介入を図っていた。今回、反応が乏しく多くを語らない患者に対し、母親の主観的情報をもとにアセスメントを行ったため、十分な看護介入が行えなかった1症例を経験したので、若干の考察を加えて報告する。
【患者】 37歳、女性。50%熱傷受傷。近医にて4回の植皮術を施行され、受傷後9ヵ月目に当院初診、入院となった。 【経過】 入院時、自発的な訴えが少なく、適切な情報が得られなかったため、母親(元某病院看護婦長)との面接を行った結果、自分が患者のキーパーソンとして積極的に介入する強い意志を持っていることがうかがえた。我々は、患者は自己尊重の状況的低下であると判断し、母親を通しての介入が効果的であると考えた。しかし、自分の思いを表出できなかった事や、再手術というストレス因子が加わった事などから、「死にたい」という言動が聞かれるようになり、一方では、「自分で頑張りぬきたい」「母親に干渉されたくない」という本心を表現するようにもなった。この時点で、本症例においての、入院時のアセスメントをもとにした母親を介しての関わりが、逆効果であったと気付いた。 【考察】 広範囲熱傷では、治療が長期にわたる場合が多い。また、受傷前後の身体状態の大きな変化から、心理面において様々な混乱をきたし易い。本症例では、入院時に限られた情報しか得られなかったため、有効な関わりを持てなかった。広範囲熱傷患者に対しては、入院時の断片的な情報だけでは看護に限界があることが示唆された。 【結論】 広範囲熱傷後の患者においては、受傷前、前医での経過など、患者の精神面を含めたより多くの情報を収集する事が必要である。よって、他の医療機関とも緊密に連携してより継続的、効果的な治療、看護を目指すことが重要であると考える。 |