パネル1
5月 13日 16:30〜17:30(第1会場) 【 司会 】 菅又 章 (東京医科大学形成外科) 鈴木 康治 (社会保険中京病院形成外科) |
演題番号:P1 |
広範囲熱傷患者の長期予後とQOL 上肢、とくに手指熱傷の長期予後と社会復帰の現 |
田中 克己、村上 隆一、藤井 徹 | |
長崎大学医学部形成外科 | |
【目的】 広範囲熱傷患者においては、近年の救命率の向上とは対照的に、救命後の高度の熱傷瘢痕拘縮による日常生活ならびに社会復帰への障害が問題となっている。今回は長期予後にもっとも影響をおよぼすと考えられる上肢、とくに手指熱傷合併例について検討を行なった。
【方法】 1980年から1994年までの15年間に当科で治療を行なった受傷面積30%以上の広範囲熱傷患者169例中、上肢、とくに手指熱傷合併例で3年以上経過観察の可能であった63例を対象とした。各症例において、年齢、熱傷面積、Burn Index (BI)、熱傷部位、手指の手術の有無および時期、関節拘縮の程度および形成術の有無、日常生活動作および就学・就労における問題点等について調査した。 【結果】 観察期間は最短3年、最長13年、平均6.8年であった。熱傷面積やBIによる重症度をもとに社会復帰の状況を検討した。手指への植皮時期をみると、BI≦30では平均8.8病日、30<BIでは平均14.2病日と、より重症例では救命的な処置が優先されるため手指への植皮時期が遅れる結果となった。手指を含めた上肢の瘢痕拘縮形成術は41例に行なわれたが、その中で複数回の手術を要したものが24例と高率に認められた。日常生活動作に関しては、多くの例では、正常または正常に近く楽に可能という結果であったが、手指切断の5例では、動作の遅延や稚拙が認められ、就学および就労において不利な条件となっていた。 【結論】 近年の熱傷治療の飛躍的な進歩の結果、従来では救命が無理と考えられていた重症広範囲熱傷患者が生存可能となってきている。しかしながら、実際には重症例においては、運動機能障害と整容的な問題のために社会復帰に関しては多くの問題を抱えている。そのため、たとえ重症広範囲熱傷例においても社会復帰を考慮した、より計画的な治療が、受傷早期から重要であると考えられる。 |