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パネル1  5月 13日 16:30〜17:30(第1会場)
【 司会 】 菅又 章  (東京医科大学形成外科)
   鈴木 康治  (社会保険中京病院形成外科)

演題番号:P2 広範囲熱傷患者の長期予後とQOL
青木 律、百束 比古、平井 隆、大木 更一郎*、川井 真*、山本 保博*
日本医科大学形成外科、日本医科大学高度救命救急センター*
【目的】 広範囲熱傷患者は救命が困難であるばかりでなく、救命後も完全なる社会復帰に至る道は長く険しい。彼等の多くは社会的に表舞台に立つことはなく、その声は人々の耳に届くことはない。しかしながら昭和50年当院に救命救急センターが開設されてから、広範囲熱傷救命患者の数も増え、彼等の問題を単なる一部の特殊な人間の問題として片付けるわけにはいかなくなった。我々は過去数回の熱傷学会および雑誌熱傷においてたびたび報告してきたが、今回は彼等が抱えている悩みを深く掘り下げることによってその共通の問題点を明らかにした。

【方法】 平成5年までに日本医科大学形成外科にて治療を行った受傷面積30%以上の熱傷患者101例について追跡調査を行った。

【結果・結論】 長期予後及びQOLを語る上で問題となるのは彼等の生活環境及び経済的基盤である。全患者を、幼小児期受傷群、成人非自殺企図群、成人自殺企図群に分けると、社会復帰の率が最も高いのは幼小児期受傷群であり、自殺企図群が最も低い。その理由は両親など、肉親家族の精神的経済的援助が重要な要因となっているからである。顔面、手指に熱傷を受傷した症例は経済的自立が極めて困難であり、特に精神疾患を背景に持つもののQOLは極めて低いといわざるを得ない。更に現行の身体障害者の認定法では広範囲熱傷救命患者の認定等級は不当に低く、彼等の経済的自立困難を考えれば新たな認定基準が必要と考えられる。いずれにせよ広範囲熱傷救命患者の(社会的)予後、QOLは決して高いとはいえず、社会的バックアップが必要と考えられる。

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