Previous
パネル2  5月 14日 14:40〜15:40(第1会場)
【 司会 】 迎 伸彦  (北九州総合病院形成外科)
   安田 幸雄  (金沢医科大学救命救急科)

演題番号:P5 高齢者熱傷患者における超早期手術の適応は?
磯野 伸雄、仲沢 弘明、片平 次郎、佐々木 健司、野崎 幹弘
東京女子医科大学 形成外科
【目的】 高齢者熱傷患者、特に手術が必要となる重症熱傷患者の治療は、臓器予備能力の低下、基礎疾患に種々の合併症などにより、治療に難渋することが多い。今回我々は、当科熱傷ユニット入院にした65才以上の高齢者熱傷患者について、超早期手術の有用性をretrospectiveに検討したので報告する。

【対象】 1993年1月より97年12月に当科熱傷ユニットに入室した194名のうち、年齢65歳以上の患者46例(23.7%)、男性21例、女性25例を対象とした。平均年齢78.1歳、手術施行症例は18例、超早期手術8例、早期手術10例であった。死亡症例は6例であり、6例中2例は超早期手術施行例であった。

【結果】 手術を行った18例中、早期手術群は10例(男性6例、女性4例)であり、平均年齢77.5歳、平均BIは9.7,PBIは87.2であった。超早期手術群は8例(男性6例、女性2例)であり、平均年齢81.8歳、平均BIは17、PBIは98.9であった。両者とも手術に伴う重篤な合併症はなく、早期手術は全例救命することが可能であったが、超早期手術群において敗血症による死亡を2例認めた。この2例はいずれもBPI120以上であり、1例はステロイドを長期間投与されていた。高血圧や糖尿病などの既往歴は61.1%に認めた。出血量では超早期手術群が有意に少なく(図1)、入院期間では差は認めなかった(図2)。  死亡症例の平均年齢は82.5歳、平均PBI121と高値であり、気道損傷合併症例は全例死亡した。2例が既往歴に起因しており、超早期手術をした2例が敗血症により死亡した。手術に起因した合併症による死亡例はなかった。


【考案・結語】 超早期手術は、早期の創閉鎖により感染性、敗血症の予防、入院期間の減少、また術中出血量の減少などの有用性の報告がある。高齢者の超早期手術の場合、既往症の治療に加え、厳密な周術期管理を行うことにより、超早期手術に伴う重篤な合併症を回避している。また、出血量の減少により循環動態に与える影響が少なく、早期の循環動態の安定化が得られる。超早期手術により、予後不良と言われているBPI100前後の症例であっても救命することが可能となり、高齢者重傷熱傷に対しても超早期手術は有用であると示唆された。
Previous