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シンポジウム  5月 13日 15:00〜16:30(第1会場)
【 司会 】 森口 隆彦  (川崎医科大学形成外科)
   佐々木 健司  (東京女子医科大学形成外科)

演題番号:S3 組織欠損創に対する陰圧創傷閉鎖法の治療効果
井砂 司、山路 仁、Argenta LC*、野崎 幹弘**
国立病院東京災害医療センター、Wake Forest University*、東京女子医科大学 形成外科**
【目的】 近年、乾燥条件下よりも湿潤条件下での創傷治癒促進を目的に多くの新素材を用いた創傷被覆材が開発され、比較的浅い皮膚潰瘍には好結果を得ているが、深達性の皮膚潰瘍などの組織欠損創においては、感染を合併し滲出液も多く適切な治療は難しいのが現状である。1997年Argentaらは、陰圧を利用した皮膚潰瘍治療装置( vacuum assisted closure device ) を開発し、感染を合併した深達性の皮膚潰瘍においても有効である陰圧創傷閉鎖法について報告している。そこで我々は、この皮膚潰瘍治療装置を使用し治療法の効果につき検討した。

【方法】 皮膚潰瘍治療装置( vacuum assisted closure device ) を用いた陰圧創傷閉鎖法とは、皮膚潰瘍面にスポンジ状のポリウレタンフォームを置き、その上を粘着性のドレープで被い密閉した後、ポリウレタンフォームに埋入した吸引チューブにより陰圧(125 mmHg)をかけることにより皮膚潰瘍の肉芽形成促進および表皮形成促進をはかる治療法である。我々は、本治療法を10症例の組織欠損創(褥瘡5例、外傷性皮膚欠損創5例)に対し行なった。

【結果】 組織欠損創の肉芽形成促進および皮膚潰瘍面の面積縮小に対し、きわめて有効な方法であると思われた。特に外傷性皮膚欠損創においては、肉芽形成促進効果が著しく、骨や腱などの露出部においても肉芽の形成が認められ、植皮術を行うことができた。

【結論】 組織欠損創に対する治療としては、有茎や遊離の皮弁にて被覆されることが主流となっているが、外傷性の組織欠損創の場合、汚染や挫滅がひどく全身状態も不安定で、すぐには手術的治療を行えないことも多い。本治療法はポリウレタンという医用素材に陰圧という要素を加え、感染を伴う組織欠損創に対しても使用でき、全身状態が不安定な状態でもベットサイドで治療を開始することができる画期的な治療法と思われた。さらに現在我々は、本装置を植皮術におけるtie over法の代用として移植皮膚固定法に応用し、その有用性を検討している。

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