【現病歴】
15:00頃、外出先で夫に別れ話を持ちかけられ口論の後、一人で自宅に戻り、17:00頃「ノーシン」36錠を内服した。18:00頃帰宅した夫が倒れている妻を発見、呼吸が荒く意識が混濁しているため救急車を要請した。救急車で救急外来(1次2次救急)に搬入(18:45)、内科医の診察を受け胃洗浄(2L)を行ない活性炭とマグコロールが投与されたが、服薬したアセトアミノフェンが5.4gと大量であるため救命救急センターに転入(19:55)となった。 |
【来院時身体所見】
軽度の意識障害(JCS 2, GCS=4-4-6=14)、BP 130/72、PR 82/min、RR 20/min、体温(腋窩)37.3℃ |
【来院時検査所見】 搬入時血液ガス所見
血算
生化学
胸腹部X線にも異常所見は認めなかった。 |
【経過】
搬入後直ちにDHPの行う方針となり、30分後には右鼠径部から大腿静脈にVas Cathが挿入され、20:48にはDHPが開始された。1時間30分を1クールとし、カラムを替えて2クールが行われた。さらに、翌日9:50よりクールDHPが行われた。輸液量は、100〜150ml/hrと強制利尿は行わなかった。
搬入時軽度意識障害を認めたが、2時間後には清明となり、vital signsは終始安定していた。 経過中肝機能異常は認められず、精神科外来の通院と近医で肝機能のfollow upを行うこととし8/16(第4病日)に自宅退院となった。
肝機能の推移
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【 Comment 】 「ノーシン」は錠剤ではなく粉末包剤と思われるが、36包はアセトアミノフェンにして 36×300mg=10.8g に相当し、体重63kgとして171mg/kgであり、服薬量から4時間後の血清アセトアミノフェン濃度を推定すると、0.59 × 171mg/kg = 101μg/ml である。これは、Rumack-Matthewのnomogram から見ても、Prescotのnomogramから見ても、危険範囲には達していないが肝障害を起こし得る量であると言えなくもない。
幸い、服用した時間が比較的はっきりしており(約2時間)、初期治療としての胃洗浄および活性炭の投与は適切であった。 しかしながら、DHPの適応については異論のあるところである。上記服用量から必ずしも必要とは言えない。初回のDHPは20:48に開始され、辛うじて服薬後4時間以内ではあるが、2回目のDHPは翌日9:50分(17時間後)であり、アセトアミノフェンの血中半減期の短いことを考えると有効であったとは思えない。
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