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Case Slide CaseT960406 Impalement Injury of Head and Chest

【 頭部・胸部杙創の1例 】

 この症例は最近の< CaseT960822>同様作業中に2階の高さから転落し、頭部を貫通し胸部まで穿通していた症例で、残念ながら頭蓋内損傷のため死亡した。

 搬入時、鉄筋は右頭頂部から左胸部まで貫通しており、頭部をやや左に傾いだ形で固定されていた。驚くことに、来院時意識レベルはJCSI-1程度で会話可能であり、「すみませんね」と話していた。

 頭部から転落し、鉄筋の刺入部は右頭頂部にあり、左後頭部で大後頭孔左側を貫き、左頸部に一度貫通した後、左鎖骨上部より再穿通し胸腔内に先端はとどまっていた。

 左頸部では鉄筋は約2〜3cmほど露出しており、左鎖骨上部から再度胸腔部に穿通している。

 穿通している鉄筋により頭部と胸部が固定されており検査ができず、一度には除去できないのでレスキュー隊により、左頸部に露出した部分で頭部の鉄筋と胸部の鉄筋とを切断した。

 切断後、胸部の鉄筋が嵌入しないように絹糸で支持している。

 頭部貫通部の鉄筋は長さ約20cm直径12mmであり、頭頂骨を同じ口径で貫通していた。鉄筋は右頭頂から脳幹を避けるように後方に走り、後頭蓋窩に達し静脈洞を損傷している。鉄骨抜去後、静脈洞からの出血は止血困難であり、これが死亡原因に結びついた。

 胸部の鉄筋は左鎖骨上窩より再度胸腔に穿通している。

 左鎖骨上から入った鉄筋は、奇跡的に鎖骨も鎖骨下動静脈も損傷することなく胸腔に達している。

 一旦、胸腔内に達した鉄筋は、左上葉表面をかするように肋骨を1〜2本粉砕し、再び前胸壁に達し、ほぼ乳頭の高さで前胸部皮下に先端がある。

 これまた奇跡的に、鉄筋は左肺上葉の前面をかすめ、肺そのものには修復すべき損傷は見られなかった。


< 杙創 >