【合併損傷・既往疾患と予後】
重症熱傷はそれだけでも大きな侵襲であり予後は決して楽観できない。東京都救急熱傷治療システムの統計でも分るように、受傷原因の半数は火炎であり、避難時に思わぬ外傷を合併していることがある。また、他の急性疾患が故に火災や熱湯で受傷することもある。熱傷に気を取られていると思わぬ合併損傷を見逃すことがある。注意しなければならないのは、
- 熱傷のみでは意識障害を来すことはない!
例え90%の熱傷でも、熱傷のみでは受傷直後意識障害を来すことはない。意識障害があれば、他の原因を検索する必要がある。
- こんな経験がある。40代の男性が、川べりの土手にワゴン車を止めて車内で灯油を浴びて焼身自殺を図った。しかし、死にきれず、土手から1kmはある自宅まで歩いて帰った。玄関で黒こげになった夫をみてびっくりした妻が救急車を依頼して来院した。全身90%のIII度熱傷であり、来院時には意識は清明であったが数時間後に熱傷ショック期を離脱できず死亡した。この例から分るように例え90%のIII度熱傷でも直後に意識障害を来すことはなく、歩くことも出来るのである。
気道熱傷(CO中毒)、頭部外傷、ショック(出血性)、薬物中毒、脳血管傷害、代謝性疾患(糖尿病、低血糖)など
- 四肢の疼痛を訴えない!
III度熱傷では疼痛は訴えないこともあるが、全く疼痛を訴えない場合には脊髄損傷の可能性も考慮する必要がある。
- 胸腹部レントゲンは必ず撮る!
原因の如何にかかわらず、胸部と腹部のX線検査は必ず行う。
- 老人を診たら病気持ち!
高齢者では既往疾患のあることが多い。特に呼吸器疾患、心疾患、肝障害、腎障害、糖尿病は予後を左右する。
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