ぶ ど う 膜

part Ⅳ
 

( 炎 症 各 論 uveitis into detail

眼は膠原線維に富む外膜と血管に富む中内膜があり,いずれもが炎症の場となりうる.

ぶどう膜炎は網膜血管炎を含み,多くが非特異的な症状・所見の組み合わせであるため臨床的にはかなりあいまい,というか広い疾患概念である.その中で,比較的特徴的であるのが「大ぶどう膜炎」とされるもので,いずれも自己免疫反応を基盤としている.
それらの頻度は全ぶどう膜炎のうちで,サルコイドーシス 15%,原田病 10%,Behçet病 7%ほどと報告された(**年).

最近のレポートでは,サルコイドーシス 10.6%,原田病 7.0%,急性前部ぶどう膜炎 6.5%,強膜炎 6.1%,ヘルペス性虹彩炎 4.2%,Behçet病 3.9%,などとなっている(2009年調査,2012年発表).汎ぶどう膜炎としての大疾患の重要性は変わらない.

下線部のクリックにてテキストが展開

  1. サルコイドーシス (sarcoidosis) サルコイドーシスの画像
  2. 原田病 (VKHVogt-Koyanagi-Harada 症候群) 及び 交感性眼炎 原田病の画像
  3. Behçet Behçet病の画像
  4. 感染性炎症 (眼内炎 ophthalmitis )
  5. いわゆる全身疾患によるぶどう膜炎
  6. 水晶体起因性ぶどう膜炎 (lens-induced uveitis )
  7. そのた
  8. )補足.
    脈絡膜炎とは名ばかりのいわゆるぶどう膜炎ではなく,視細胞病変,あるいは微小血管炎ないし脈絡毛細管板の梗塞・萎縮のようでもある.
    1. APMPPEacute posterior multifocal placoid pigment epitheliopathy急性後部多発性斑状色素上皮症   ( 症例写真

      脈絡毛細血管板の(炎症性 )過性梗塞.両眼性で,なぜか後極に集中する.

    2. geographic choroiditis地図状脈絡膜炎   ( 症例写真

      APMPPEの広範囲発症かつ重症版あるいは再発性のもの.進行性の萎縮瘢痕をきたし,初発部位や進行方向が多様で匐行性;serpiginousともいう.

    3. MEWDSmultiple evanescent white dot syndrome多発消失性白点症候群   ( 症例写真① 症例写真②

      後極部・血管アーケードから赤道部にかけて,境界がやや不鮮明で小さい白色斑が多発する.ERGでは振幅減弱,EOGではL/D比の低下がみられる.急性期のOCTでは,視細胞外節がまだら状あるいは瀰漫性に描出されなくなる. IAによると,原発は脈絡毛細血管板の循環障害らしい.FAFでは,当該部での過蛍光を示し,診断の根拠となる.原則,両眼性.

    4. AZOORacute zonal occult outer retinopathy急性帯状潜在性網膜外層症

      視神経乳頭周囲で,杆体視細胞外節に異変が起きる(網膜外層症)OCTでは,ellipsoid zone(ISOS line)の不明瞭化消失が観察される.これによりMariotte盲点の拡大(enlarged blindspot syndrome)をきたし,時に両耳側半盲となったりする.片眼性,あるいは両眼性.時に色素上皮を巻き込み,色素変性類似の視細胞~色素上皮レベルの萎縮・変性をきたす.
      回復可能(2か月くらい)であるのがMEWDS,2年以上の経過あるいは原則回復しないのがAZOOR.

    5. PICpunctate inner choroidopathy点状脈絡膜内層症   ( 症例写真

      脈絡毛細血管板が小円形打ち抜き状に消失.後極から赤道部に小円形・斑状の萎縮・変性病巣がなぜか連なったように帯状に発生する.

    6. MCPmultifocal choroiditis and panuveitis多巣性脈絡膜炎

      PICより大きめの打ち抜き状萎縮病巣が特に後極の多発.ときに線維化を伴う(multifocal choroiditis associated with progressive subretinal fibrosis).患者血清中に網膜視細胞や網膜色素上皮に対する自己抗体が検出され,網膜下線維増殖部には タイプ IIIIVVVIコラーゲンの沈着があるとのことで,網膜自己免疫疾患の型の可能性ともみられている.同じスペクトラムに subretinal fibrosis with uveitis syndrome がある.滲出傾向・脈絡膜新生血管,さらに活動性炎症所見(panuveitis)がみられることがある.

    7. ARPEacute retinal pigment epithelitis急性網膜色素上皮炎
    8. AMNacute macular neuroretinopathy急性黄斑神経網膜症
      網膜中深層の毛細血管閉塞
    9. AAORacute annular outer retinopathy
    10. AIBSEacute idiopathic blind spot enlargement syndrome
    11. RPCrelentless placoid chorioretinitis
    12. birdshot retinochoroidopathy散弾状網脈絡膜症
      網膜外層の自己免疫系炎症らしい.

と,いうことで,“おわり”. 

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2024