眼 底 の 病 態

§ 眼底の臨床病理 Ⅰ.眼底所見 clinical aspects (見出し一覧)

眼底 eye ground/fundus oculi とは,眼球の中」あるいは「眼の奥」で,直視できる組織,
網膜 retina視神経乳頭 optic disc/papilla脈絡膜 choroid,を総称する正面像である.

§ 眼 底 ocular fundus

眼底検査 fundus examination

網膜は人体の中で血管を直接観察できるほぼ唯の器官であり,視神経は発生上大脳白質の部すなわち中枢神経としての性質を持つ.従って眼底検査とは眼科疾患だけでなく,種々の全身疾患に伴って眼底に現われる病変のチェックをも意味する.このような観点が眼底検査の大きな意義と思われる.

通常の眼底検査の手技には,検者が直接観察するものとして直像検眼鏡または倒像検眼鏡,あるいは細隙灯顕微鏡を用いる方法がある.眼科で言うところの眼底検査は,周辺部はもちろん硝子体毛様体を含む眼球内部全体を指していることが多い.『眼底所見』というと,暗黙でこれら全体を含める事になる.

白質:脳脊髄の神経線維の部分.対するのが灰白質で神経細胞体の部分.網膜でいうなら,顆粒層(核の部分)が灰白質に相当,網状層あるいは線維層が白質に相当する.

fundusFundus (Latin for "bottom") is an anatomical term referring to that part of a concavity in any organ, which is at the far end from its opening. (https://en.wikipedia.org/wiki/Fundus) だそうです.

図 02 ぱのらま

検眼鏡眼底カメラ

眼底検査は検眼鏡 ophthalmoscope で眼底を観察し,眼底カメラ fundus camera でこれを写真に撮る.眼底カメラは客観性・記録性のゆえに通常の診療記録や集団検診などの場に広く普及しているが,写真は解像力に限界があるほか,写されている範囲以外は判らない点が致命的である.ワイドを発で撮影するカメラは未だ般的ではないと思われ,これをカバーするために貼り合わせ写真(パノラマ画像化)の技がある.
当シリーズでもいくつかの広角写真を用意した.後極の外に目を向ける練習になれば幸である.

図 03 正常眼底 図 04 近視眼底 図 05 白皮眼底albino

眼底表面網膜の神経要素は透明であり,検眼鏡ないし眼底カメラで直接見えるのは,視神経乳頭・網膜血管・網膜色素上皮ということになる.血管は細く明るい色調が動脈,太く暗い血管が静脈である.網膜色素上皮の奥に脈絡膜があり,床下となっている.
有色人種(上図↖左colored)では網膜色素上皮はやや褐色がかり,脈絡膜紋様は判然としないが,黄斑の認識は容易である.近視(上図中)あるいは加齢により紋様が目立つようになる.豹紋状 tigroid/紋理状 tessellatedという.白皮症(上図↗右albino;白子)では全体に赤みが強い上に脈絡膜の血管模様が直視できる.黄斑部の色調は明瞭でない.

眼底の色は照明光と網膜色素上皮脈絡膜の色素(と脈絡膜の血流 ・・・たぶん)に左右される.照明光を当てて帰ってくる光を観察することで,反射』と言う表現を使う(網膜反射,血管反射 ・・・)
多くの病変は刻々変化するものであるから,時間経過を加味して所見を把握することが求められる.

§ 部位の表現

  1. dimension

    眼球は,角膜頂点が前極 anterior pole,後方の中心が 後極 posterior pole,前後方向が axisとなる.眼球の腹で円周最大部が赤道 equator,極を通る外周が子午線(経線 meridian)である.これらを眼底部位の大まかな位置表現に対応させると,視神経乳頭・黄斑を含む帯が後極部,その外側で渦静脈のある部分が赤道部,さらに周辺部(〜鋸状縁部)と続く.

図 06 面 図 07 部位

赤道部までを中間周辺部 mid periphery,その先を最周辺部 far periphery/most peripheryということがある.
眼底写真の画角(水平約4550°)が,だいたい後極部の範囲をカバーする.

  1. location

    ①構造上の眼底中心は視神経乳頭である.これにより病変の方向は,乳頭から耳側・鼻側・上方・下方となり,または時計廻りの時刻を用いる.乳頭から鼻側水平方向(つまり内側)は,右眼では3時方向,左眼では9時方向となる.

    図 08 図 09 乳頭径

    病変の大きさや乳頭縁からの距離は乳頭の直径と比較する.乳頭径(DDdisc diameter)である.乳頭径は個人差が大きいが,横径と縦径とを平均し,1DD 1.5mm 5°,ほどになる(300µm は,視角にしておよそ1° に相当する.計算の根拠は こちら )
    上右図では乳頭径は横径をとっている.元より大まかな表現であるからイメージとしては差し支えないが,緑内障での陥凹を評価しようとするときに横C/D比では少々不都合である.さらには乳頭境界についてもややこしい.これらは下記参照.
    中心窩あるいは網膜血管との位置関係で表わすこともある.

    ②機能的な眼底中心は黄斑(中心窩)である.すなわち,視野としてとらえるものである.

    図 10

§ 眼底の各要素

眼底検査は,まず視神経乳頭,黄斑部を確認し,血管を観察する. 図 11 disk

(1) 視神経乳頭  optic disc

  1. 視神経乳頭は視神経線維が集合し,網膜動静脈が出入りする.
    径は1.5mm(〜縦径1.7mm で,やや茶褐色の色素輪(zone alpha)が周りを囲み,網膜色素上皮・脈絡膜の断端と見做す.乳頭境界 disc marginである.明るいオレンジ色で神経線維の占める部分が辺縁 neural rim,中央のへこみが陥凹 cup/excavationである.この奥が篩板 lamina cribrosa/cribriform plateとなる.
    通常の乳頭径は 横縦 であるが,陥凹は 横径縦径 である.これにより rim幅は下方が厚く,上方,鼻側,耳側の順で薄くなる(ISNTの法則)

    図 12 図 13

    網膜内境界膜は Müller細胞由来であるが,乳頭面内境界膜(Elschnig membrane)はアストロサイト由来となる.肥厚した陥凹部内境界膜は central meniscus of Kuhntと呼ばれる.
    網膜端では神経線維との間にグリア組織(Kuhnt)が介在し,さらに脈絡膜端との間(Jacoby)では篩板前の神経線維を束ねている(mantle).このマントルの外周は強膜線維が円周状になっている結合組織で,Elschnig境界組織と呼ばれる.

  2. Elschnigの強膜輪は,境界組織 模式図眼底写真 の 例 で

  3. 乳頭境界は,網膜構造の境界でもある.
    緑内障研究や近視研究の立場では境界・辺縁・陥凹についてもう少し厳密に定義されている.しかし悲しいかな,乳頭傾斜・強度近視・緑内障では型通りにはならない.

  4. 乳頭内部は,およそ四部に分ける. 図 15

    the surface layer:神経線維層で約100万本の神経線維が集合する.硝子体面は神経線維まわりのグリア細胞(主に星状膠細胞 astroglia アストロサイト)による内境界膜である.網膜端での介在グリアが Kuhnt組織で,網膜各層と神経束とを隔てるアストロサイトである.
    the prelaminar layer:前篩状板部では,アストロサイトの突起(グリア隔壁)が神経線維をとりかこみ約5001,000本ほどの束(神経線維束)を形成する.脈絡膜と神経束とを隔てる外周グリアは,Kuhnt組織から連続するJacoby組織である.
    the laminar layer:篩状板部では,強膜から連続するコラーゲンの薄板(laminar beam)が多重層になっている.薄板には多数の孔(laminar pore)があり,神経線維束を通す.チューブ状の神経束のグリアチャンネルは篩板内で枝分かれしているとのことである.強膜と神経束を隔てる外周グリアはJacoby組織から連続し,mantle外套となっている.
    the retrolaminar layer:後篩状板部から神経線維は有髄となり,眼外と解釈する(無髄部までが視神経乳頭ということになる).篩状板後方のグリアは,髄鞘を形成している希突起(乏突起)神経膠細胞(oligodendroglia)である.軟膜に接するmantle(neural canal)はアストロサイトで構成されている.
    乳頭色の部は髄鞘の色と考えられる.なお,astrogliaoligodendrogliaの眼内進入を止めて,網膜内では有髄にならないようにしているとのことである.

    図 16

    乳頭の毛細血管網は①表層が網膜中心動脈系であるが,篩状板部は短後毛様動脈で栄養される.②前篩状板部は脈絡膜血管とZinn-Haller動脈輪から,③篩状板部はZinn-Haller動脈輪と軟膜動脈の反回枝,④後篩状板部は軟膜動脈の反回枝とわずかな網膜中心動脈の枝による.いずれも網膜中心静脈へ環流する.これらにより,乳頭部は網膜循環系と脈絡膜循環系の接点となっている.

    蛍光眼底造影検査において後期で過蛍光となる部分は脈絡膜の断端,すなわち乳頭縁を示している.このことは血液関門の機能を示唆し,組織学的にもほとんどの血管内皮に tight junctionが認められる.脈絡膜血管の証しである有窓血管はない.なお,脈絡毛細管板と違い乳頭部血管は自動調節機能(autoregulation)がある.

    神経線維と網膜中心動静脈が強膜篩状野を通過し眼外(眼窩・脳の中)となる.
    乳頭面には眼内圧が,強膜は視神経鞘脳硬膜と連続し脳脊髄圧がかかっている.つまり眼圧と脳圧は篩状板を介して拮抗する.眼内と眼外を隔てるのは『篩状板』ということである.

  5. 視神経の続き篩状板のその先は ・・・・・

  1. 乳頭のチェックポイントは,形状・境界・陥凹・辺縁・色調・高低・血管走行などである.

    図 17 視神経乳頭

     0 .)形状のバリエーションは多くの写真で確認して欲しい.
    近年では乳頭面積が注目されている.白人ヒスパニックアジア人黒人,とのことである.mediumサイズで大凡23mm2 ほどである.

    ⅰ.)乳頭境界とは,➊篩状板部の外周,➋強膜輪,➌脈絡膜の端,ということで定義に従えば ➊➋ ではあるのだが,鮮明・不鮮明を言う時おそらく ➌網膜色素上皮層の終端を目印とするのが分かりやすい.

    ⅱ.)色調とは,おもに辺縁部の状態である.網膜表層すなわち神経線維層と前篩状板部の毛細血管により橙色が,篩状板により黄色が生じる. 図 18 回旋乳頭例

    ⅲ.)高低とは,辺縁部の網膜表面の隆起状態と陥凹底の深さである.辺縁部の隆起は時に乳頭浮腫とまぎらわしい.

    ⅳ.)そういうことで,乳頭部の正常範囲 within normal limits(WNL)概には決めにくい.例えば右図はどうだろうか 長径は反時計周りに50度回転しているし,陥凹は篩状板をはみ出してコーヌスに重なってるし,重輪の様でもあるし・・・・・
    ということで,このような長径が垂直でない所見を傾斜していると言うことがあるが,そのまま ● ●  と言っては不可ない.傾斜乳頭とは既に別の病態として認識されており,また乳頭傾斜についても視神経付着が強膜に対して斜めに傾いている状態 oblique insertionを指す,ということでこの場合は回旋乳頭となる.

  2. 視神経乳頭部病変 disc lesion

    図 19 毛様網膜 図 補 毛様網膜
  3. 網膜血管は乳頭部を中心としてまず上下に分かれ網膜に分布する.動脈は基本的に網膜中心動脈の枝ということになっているが,時に脈絡膜から顔を出している動脈がある. 毛様網膜動脈 cilioretinal arteryである.この網膜内層を栄養する脈絡膜血管は(眼数にして)およそ10%ほどに観察される.

  1. では,脈絡膜,すなわち渦静脈へ排出する網膜毛様静脈 retinociliary veinはどうだろう.これこそ乳頭部の形成異常のカテゴリー,ということで非常に希,否定的,ということになっている.
    網膜静脈はどこへ行く ♪♬♪ (ただし,optociliary veinは病理変化である)

図 20 図 21 図 22
  1. 視神経乳頭 papilla nervi opticiという表現は,組織学的な断面形状のイメージがある.これに対し,眼底所見の中のか所としての平面的なイメージでは discus nervi optici 視神経円板となる.なぜか英語圏では disc が多いような気がするが,漢字では通常,視神経乳頭が般的である.
    眼底でのモノサシである disc diameter(DD)は眼科用語では乳頭径という

    papilla diameter とは言わない.PD と言うと別の意味の略語になる.

  2. disc or disk
    ラテン語の discus とかギリシャ語の δίσκος (diskos) が元となり(Wiktionaryによる)deskdiskdish などが仲間なのだとか.英和辞典でも disc → diskを見よ とあるので,やはり『k』ということですかね(机を desc とは書かないね).ところが,
    Sir Duke-Elder 著による眼科の古典System of Ophthalmologyでは disc が採用されていて,その所為か,医学界で眼科の『c』は有名な話のようである.では眼科以外では
    なお,現代イギリス英語は disc,アメリカ英語は disk という説明もある.
    さらにいわゆるITの世界では,それぞれの名前に固有名詞がからんで混沌.例えばコンパクトディスクは disc だし,ハードディスクは disk だったり,じゃ DVD は フロッピーは

(2) 網膜血管  retinal vessels

  1. 網膜に分布する血管は,内頸動脈の分枝である眼動脈から網膜中心動脈が分岐し,視神経乳頭から網膜内に進入後,網膜細動脈 網膜毛細血管 網膜細静脈 網膜中心静脈の経路で網膜全体を循環し網膜脳層の栄養を受け持つ.乳頭上で動脈は内径で約100µm,外径で約200µm ほどである.

  2. 網膜血管壁はほぼ透明で血液がそのまま見えている(血柱という)
    血管が透明であることを実感することはほとんどないが,よく見ると動脈はもとより静脈を透かして脈絡膜の斑紋が確認できることが多い.【 写真さらに画像クリックで拡大

    対して血液が白濁する病態がある.牛乳を混ぜたようなものだ.【 写真さらに画像クリックで広角

    血柱:赤血球が流れる軸流と血管壁に沿う血漿の辺縁流のため,螢光眼底造影写真でみる血管内腔のほうが太い.

  3. 図 23

  4. 模式的には,網膜血管は各象限・四方向に分岐する形態になっている.動脈(A;artery)は乳頭でまず上下に分かれ,神経線維層内を走行し分岐を繰り返して周辺へ分布する.静脈(V;vein)も同様に本ずつ合流し,神経線維層内を走行して上下から視神経乳頭内に集合する.般的に網膜面での網膜動脈と網膜静脈の口径比 (arteriole-to-venule ratioAV)は,12 乃至 23 ほどである.
    黄斑をはさむ上下の耳側血管を,血管アーケード vascular arcadeという.黄斑耳側水平方向は上下アーケード血管の接点となり,これが(耳側)血管の 縫線部 temporal rapheである.しかし神経線維の走行とは別の配置となっており(神経線維の縫線と網膜血管のそれとは致しない),さらに周辺では上下いずれかが優勢に分布する.不思議なことである.

    乳頭+黄斑+血管アーケード近辺後極,ということになる.また鼻側血管もアーケードということがあるが,実際は直進走行となる.

    図 24

    血管パターンには個体差があるため,生体認証・個人認識(biometrics)が出来る.

  5. 網膜血管の特性

    終動脈であることから網膜面において動脈と静脈は必ず交互に配列されており,動静脈枝の分布形態により分岐後は動静脈交叉部が生じること,交叉部では動静脈の細網線維性外膜が共通であること,毛細血管床は動静脈を持ったユニットの集合となっており隣り合うユニット同士は機能的に独立した潅流単位であること,などが特徴的な網膜血管病変を示す理由となっている.

    終動脈動脈と動脈の間に吻合を作らない.終末血管.ゆえに,動脈同士・静脈同士の交叉はあり得ない.なお,周辺部においては動脈と静脈との間に吻合が認められている.

    図 25

    交叉部眼科用語集では『交差部』であるが,ここでは敢えて「叉」を用いる.「叉」のほうが血管が重なった感じがするので・・・
    右図は,交叉部で動脈に影響される静脈流のシェーマを示す.なお,静脈が下を通るのは80%ほどとのことである.この部の所見が交叉現象となる.

    交叉部 その2OCTによる交叉部の観察では,静脈が下を通るのは上記ほど多くはないらしい.平面画像では確認の限界があるため,としている.

    .臨床症状に関わる基本構造は,終動脈と網膜(毛細)血管の立体的配置である.

    網膜毛細血管網は基本的には層構造を示す.すなわち,下右図Aは 浅層毛細血管網(放射状乳頭周囲毛細血管(RPC)を含む神経節細胞層血管Bは 中層毛細血管網(内網状層と内顆粒層の境界部付近レベル)Cは 深層毛細血管網(内顆粒層と外網状層の境界部付近レベル)を示している.

    図 26 図 27
    (左引用):眼科診療プラクティス 85,2002】(右原図)Henkind P;Trans Am Acad Ophthalmol Otolaryngol,1969】

    なお病理組織学では 四層 と認識されている.すなわち,
    ❶放射状乳頭周囲毛細血管(RPCs):網膜細動静脈と共に神経線維層に存在,
    ❷表層毛細血管:神経節細胞層に存在,最も広く分布,
    ❸中層毛細血管:内顆粒層の内寄りに存在,後極部に分布,
    ❹外層毛細血管:内顆粒層の外寄りに存在,赤道部まで分布.
    これにより,赤道部では神経線維層神経節細胞層と内顆粒層外網状層の2層に,周辺部では表層毛細血管網の1層構造となり,鋸状縁までの1乳頭径の部分は無血管である.

    図 28

    .動静脈の交互配置は 中心窩周囲の血管配列 にも当てはまる.さらに上耳側・下耳側領域とも黄斑耳側2.5乳頭径ほどの範囲で交互配置の規則性が維持されている.ここが縫線部血管で構造的には毛細血管の連絡はあるものの,機能的には上耳側領域下耳側領域で血流の連絡はない.これにより分水嶺 watershed/ridgeと呼ばれる.
    右図で縫線部は上耳側動脈に対し下耳側静脈がかみ合い(interdigitation),平均的なパターンではないと分かる(そういえば,乳頭面の血管もヘン.

    .動脈-静脈の分岐パターンにも,例外は多い.

    図 29 静脈異常 図 30 動脈異常 図 31 詐欺血管

    写真左では上耳側動脈にからんだ小静脈(新生血管ではありません)が,写真中では分岐動脈が ・・・・・
    更には『なりすまし』か『すり替わり』の如き詐欺血管まで 

    .以上により,潅流単位という解釈,動静脈交叉部や縫線部の存在,などが説明できる.

  6. 循環調節 (引用1~5:日本の眼科 84(4),2013
    細動脈は動脈壁内の平滑筋層が厚く,血管緊張の程度により全身血圧が変動し,組織への血流供給が決定される.網膜循環についての調節機構は以下の様に説明されている.

    1. 代謝性調節機構:生体内で網膜は酸素消費量が最大の組織であり,酸素分圧の変化に対し血流量が鋭敏に増減する.
    2. 筋原性調節機構:内圧が加わると血管壁は収縮し,圧が下がると血管壁は拡張する.定の血流量のため
    3. 血流依存性調節機構:血管内皮由来拡張因子(特に 酸化窒素 NO)の放出.特に低酸素負荷に反応
    4. 神経性調節機構:網膜に神経支配 vasomoter nerveはないとされているが,交感神経α受容体やβ受容体が存在し,血中のノルアドレナリンなどによる調節が示唆されている (α1は血管収縮,β2は血管拡張
    5. 自己調節機構 autoregulation:組織灌流圧の変動に対して,神経やホルモンの影響を受けずに組織血流を定に維持するメカニズム.
    6. strain vessel:太い血管から直接分岐している細動脈は拍動性の高い圧力に曝され, かつ組織までの圧較差を維持するために緊張度が高い血管で,strain vesselと呼ばれる.もともと高い圧負荷を受けている細小血管は,高血圧によりさらなる過剰負荷がかかるとまず最初に傷害され,autoregulationが破綻する部位であると考えられている.
      条件下にある血管は腎,心,脳,眼で,障害は平行して進行すると説明される.
  7. 図 32 正常蛇行症
  8. 血管病変 vascular lesion

    血管病変といえば網膜循環障害すなわち,虚血・出血・浮腫・炎症・血管新生,などである.中心になるのは,閉塞病変と透過性亢進である.

  9. 動脈-静脈の走行パターンは血管病変の解釈に欠かせないが,例外は多い.
    右のぐらいになると先天蛇行と言うのは簡単だが ・・・・・

(3) 網 膜 retina

図 33
  1. 網膜表層はかすかに白っぽく掃いたようなスジがついてみえる.スジは神経節細胞の軸索突起,すなわち視神経線維である.
    中心窩から視神経乳頭への最短ルートが,乳頭黄斑線維束である.黄斑耳側では神経線維が上下に分かれて,弓状に黄斑を迂回して視神経乳頭へ向かう.この上下に分かれる水平経線が(耳側)縫線 temporal raphe である.上下方向に向き合うのは黄斑から2乳頭径ほどで,それより更に外側では並走,というか直線走行となる.

  2. 網膜の枠組み構造

    図 34

    網膜は発生上構造上の特性があり,病理変化を解釈する基となっている.発生の立場では,透明な神経要素(感覚網膜)と,色素を持つ網膜色素上皮とから成る.両者を分けるのが 網膜下腔 ということになる.

    方,網膜循環の立場では,脳層(内層)神経上皮層(外層)という分け方ができる.

    右図に従えば,両者を分けるのが 中境界膜 ということになる.

     模式図 では 】

    ⅰ.水平構造
    水平方向の構造は,①内境界膜 と 神経線維層,②中境界膜,③外境界膜,④網膜色素上皮 と Bruch膜,によって仕切られた層構築となっている.

    ⅱ.垂直構造
    垂直方向の構造は,信号プロセシングを行う神経は階構造を示している.Müller細胞は網膜を縦貫して感覚信号伝達のための神経接続と支柱となり,両端は内外の境界膜を形成する.

    図  補 血管

    ⅲ.血管の重分布
    ①網膜血管網膜内層の栄養.毛細血管は内顆粒層の深部にまで存在する.
    ②脈絡膜網膜外層の栄養.視細胞部分は無血管となっている.
    網膜内の酸素圧は,両者の分布の境界付近で最も低い.この中間帯は watershed areaと表現される(中境界膜に相当)

    ⅳ.神経上皮とは光受容細胞を指す.眼科では網膜色素上皮細胞と網膜視細胞を合わせて神経上皮層と云っている.すなわち,網膜10層では網膜色素上皮層,視細胞層,外顆粒層,外網状層の部,となる.

    ⅴ.脳層とは神経回路を指す.外網状層神経線維層と考えるほうがわかり易いかもしれない.内境界膜は眼球壁内面(虹彩の裏から視神経乳頭まで)を連続してカバーする基底膜である.ということで,脳層がない中心窩にも「内境界膜」は有る.

  3. 網膜病変 retinal lesion

    眼底の病変は,網膜色素上皮以外の網膜は透明であるから必ず色調の変化として観察される.色調の基本的な変化は,白または混濁,黄,赤,黒であり,さらに位置関係(色素上皮より奥か手前か,など)で修飾される.
    また,眼底表面反射と黄斑輪状反射は平坦性を示す指標となり,神経線維層の萎縮欠損を評価,あるいは浮腫の存在を疑う手がかりとして重要である(黄斑部の項

(4) 特殊部位

  1. 黄斑部 macular region
    1. 血管アーケード内が黄斑部,視神経乳頭・耳側血管アーケードを含む中心部帯が後極部である.

    2. 黄斑は周囲が厚く内部は薄くなっており検眼鏡的に(特に,眼底写真の上で)1乳頭径強の輪状反射 ring reflexを認める.おおよそこの内部が黄斑 macula luteaである.網膜内(視細胞のほか双極細胞や神経節細胞)にキサントフィル(天然色素)を含むこと,色素上皮にメラニン(個人差・人種差あり)・リポフスチン(加齢変化)を含むことで暗褐色〜暗黄色を示す.特に中心窩(錐体軸索内)にはキサントフィルが集中している.蛍光眼底造影写真上で中心窩が暗く(dark macula という)写るのも,これらの色素がフィルタとなり蛍光輝度を暗くしていると考えられる.

    3. 中央は正常固視点のある中心窩 fovea centralisで,乳頭中心から3乳頭径耳側(4mm;約15° 離れ,0.8mm;約3° 下がる)にある.径約300350µm(1°)の範囲の最も薄い部分で,凹み により小窩反射 foveolar reflexがみられる.

    4. 網膜反射・輪状反射や小窩反射は加齢とともに不明瞭となる.

      図 35 輪状反射 図 36
      図 37 OCT 図 38
      図 39 中心窩
      G:網膜神経節細胞  H:Henle線維層  N:内顆粒層

      黄斑内は網膜色素上皮と視細胞のみの構造(神経上皮層)で,脳層は無い.視細胞から伸びる軸索は外網状層で斜め,従って放射状の配列になっており,Henle線維と呼ばれる.外網状層よりも近位の神経要素は周囲に配列し,双極細胞体が現れるのは中心小窩から175µm,神経節細胞が現れるのは200µmあたりからである.
      網膜血管の存在しない黄斑内部・中心窩 foveaの径500700µmの範囲(FAZ:Foveal Avascular Zone)は,脈絡膜毛細血管と傍中心窩領域の網膜毛細血管からの浸潤拡散によって栄養される.
      Müller細胞は網膜の支えとして中心小窩部では特殊な形状(MccMüller cell cone)になっている.

    5. 網膜厚は,中心小窩部分で最も薄く150200µm ほどである.中心窩周囲で250300µm ほどである.基底膜である内境界膜は般には中心窩周囲で1.5µm(1,500nm)ほどの厚みとされている.中心窩内では1050nm ほどの厚みである.

    6. 解剖学的な区分に従えば,中心部網膜は,

      図 40 黄斑

      a:中心小窩 foveolaは錐体視細胞とMüller細胞のみの部分で,径300350µm凡そ1°錐体細胞数 約20,00025,000
      b:中心窩 foveaはだいたい輪状反射に致する径約2,000µm,このうちの径約500µmの内部が無血管 avascular zone.輪状反射の内側は錐体数優位,外側は杆体数優位.
      c:傍中心窩 parafoveaは外周径約3mmの範囲でHenle線維層を形成し,中心窩縁では神経節細胞密度が最も高い(8)
      d:周中心窩 perifoveaは外周径約6mmの範囲で,杆体視細胞が最も多い部分.
      となる.

    7. 臨床でいう『黄斑部』とは,ややあいまいである.
      『黄斑 macula』は解剖名での『中心窩 fovea』内,『黄斑部 macular area』は図での外周円内乃至は血管アーケード内で解剖名では『中心部 area centralis』,そして血管アーケードを含んで『後極部 posterior pole area』といったところであろうか.

      300µmは,角度にして1° に相当する(計算の根拠).そうすると,1乳頭径(1.5mm)5°,図の外周円は直径6mm程の範囲20° ということになる (Amsler grid charts の範囲くらいかな)
      なお『黄斑部』について,直径1.5mm の部分(この場合,中心窩黄斑部)とする記述と,直径56mm 以内の部分(従ってこの場合,中心窩黄斑)を表すような記述が(筆者が違うと)ひとつのテキスト内でも混在することはしばしばである.

    8.  例 外

       まれに,中心窩が大きく回旋していたりする.カメラのトリックではない.耳側縫線はどうなってるのだろう.おおよそ,乳頭下縁レベルが目安となる.
      中央図輪状反射が無く暗色調が不完全な黄斑を認めることがある.中心窩と思われるところに動脈分枝と見られる血管が重なっている(この症例写真は黄斑低形成 hypoplasiaの合併による形成異常.なお,毛様網膜動脈も認められる.
       まれに,黄斑が水平より上がっていることがある.撮影時に回旋がかかっている訳ではない.Mariotte盲点はどこに検出されるのだろう.

    図 41 回旋 図 42 黄斑低形成 図 43 回旋
    1. 黄斑病変 macular lesion

      黄斑網膜は神経要素毛細血管硝子体の構築上,特殊な部位である.機能的には視力を確保するための構造であろうが,旦発症した病理とすると視力には不利に作用すると言わざるを得ない.
      重要な黄斑部病変は,黄斑浮腫,硝子体-網膜境界病変,Bruch-脈絡毛細血管板病変である.

図 44

  1. 周辺部網膜 peripheral region
    1. 周辺網膜では神経要素が消え鋸状縁を作り 毛様体扁平部無色素上皮 へ続く.鋸状縁をはさんで Müller細胞の基底膜と硝子体線維の体化した部分が,硝子体基底 vitreous baseである.

    2. 血液循環から見ると,前部分節と後部分節の接点となる.網膜最周辺1.5mm は,無血管となっている.

    3. 臨床的事項

      支持装置の Müller細胞により鋸状縁部分は強固になっている.
      また,硝子体膜との癒着をつくる病態,網膜内層が萎縮する病態,網膜色素上皮脈絡毛細血管板・脈絡膜萎縮となる病態,などがある.

    4. 周辺部病変 peripheral lesion

(5) 主要病変

  1. 視神経乳頭部病変  【return

    ⅰ.表層が混濁すると 境界不鮮明 blurred marginとなる.視神経線維軸索流のうっ滞と,循環障害による浮腫によるものである.通常,腫脹隆起 swellingを伴う.次的 primaryな病変の場で言えば神経線維であるか血管性であるか,になる.機能障害がないときは を冠する.偽視神経炎が例であるが,どうしてどうして難しい・・・・・

    ⅱ.色調は主に毛細血管の病態が反映される.混濁腫脹があるとき強い毛細血管拡張を伴えば 発赤浮腫,毛細血管拡張が少ないときは 蒼白浮腫 となる.拡張する毛細血管は,いわゆる RECs領域である.原因が想定されるとき蒼白を 虚血 ということがある.虚血浮腫が例である.
      毛細血管あるいは血流の減少では褪色 pale disc化 する.すなわち萎縮 atrophyである.視神経線維(視束)の萎縮が先行するとグリア増殖を伴い,神経線維の透明度がなくなり黄色味となる.様萎縮が例である. 図 45 SSOH例

    ⅲ.陥凹 cuppingの楕円は,生理的には水平方向の径の方が大きい.緑内障では垂直方向の径が大きくなる.陥凹の評価がC/D比である.例えばC/D比の左右差が0.2以上の非対称では緑内障を疑う.
     陥凹が拡大すれば辺縁がやせるのは言うまでもない.辺縁は視神経線維で出来ていることから,神経線維の萎縮と陥凹拡大は表裏体となる.陥凹底には篩状板が見える.ということで 即ち 深さ の認識も不可欠である.

    ⅳ.通常,辺縁 rimの菲薄化というと病状の進行に因る陥凹径の変化と連動することになるが,陥凹拡大とは無関係に上方鼻側の rim幅が変則的に薄く,同時に神経線維層の表層反射が乏しい眼底に遭遇することがある.バリエーション幅が大きい分,丁寧な観察を要する( 乳頭部先天異常.

    ⅴ.血管走行は陥凹の形状変化と共に,重要なチェックポイントである( 緑内障.
     しばしば静脈拍動が観察される.また眼球の圧迫で,誘発することができる( うっ血乳頭.
     乳頭部循環では,静脈系はすべて網膜中心静脈へ流入する.ここに循環障害が生じると脈絡膜へ合流する側副路ができる.optociliary vein である.

    ⅵ.  【 蛍光眼底造影検査 では

    ⅶ. 【 乳頭部の症例写真 では

  2. 血管病変  【return

    ⅰ.血管の変化として,動脈(A)では細くなり 静脈(V)では太くなる.即ち,AV比 が小さくなる.動脈変化は直線走行口径不同〜狭細血管壁の混濁(反射亢進),静脈変化は拡張蛇行である.交叉現象はこれらが強調されたものと解釈される.通常の交叉現象は加齢のほか,高血圧糖尿病による所見であるが,時に病的意味のない先天異常のこともある.
    各種の病態によって毛細血管のダメージが加わる.毛細血管の変形は,血管瘤〜拡張と内皮細胞増殖すなわち新生血管形成が基本形である.

    ・血管拡張網膜静脈閉塞でのバイパス形成,など.
    ・毛細血管瘤血管周皮細胞の消失 血管内皮細胞の増殖による.網膜循環障害の基本パターンであるが,糖尿病網膜症が典型ということになっている.血管内皮細胞増殖といえば新生血管そのものであることで,毛細血管瘤とは血管新生の病態に含めてよい.
    ・血管新生  こちら

    ⅱ.血管の病理(網膜循環障害)は,虚血出血浮腫炎症血管新生,などである.中心になるのは,
    閉塞病変透過性亢進 である.

    ★出血 (hemorrhage)  網膜病変 の 項 で

    ★血管閉塞 (occlusion)
    閉塞は血管内皮傷害を基として血栓が形成されて起きる.元の管腔はグリア細胞(おそらく Müller)によって埋められ,白線化する.終末血管であることから,支配領域は容易に虚血になる.虚血網膜の問題は新生血管が発芽することである.通常,内皮細胞の増殖機転は静脈側で起きる.

    疾患的に見ると閉塞は 血栓塞栓 による.動脈閉塞は両者で発症し,静脈閉塞は血栓による.
    閉塞の原因
    ① 動脈硬化・・・

    乳頭部の動脈(まれに網膜動脈で)は,硬化性変化により内腔狭窄をおこす.実際に眼動脈が閉塞するような状況は,心(心房細動や弁膜症による血栓)⇆内頸動脈(血栓やアテローム物質)が責任部位となることが多い.
    静脈閉塞は,交叉部(網膜面)や並走部(乳頭内)で静脈内血栓が生じることによるが,動脈硬化による影響が元である.

    ② 高血圧症・・・

    自動調節の限界を超えるような血圧の変化では,血管攣縮と血管内皮の損傷がおこる.
    血管攣縮が即ち虚血であり,内皮損傷がすなわち透過性亢進である.これらの変化は,網膜血管<脈絡膜となる.

    ③ 糖尿病 ・・・

    血管閉塞をおこす代表疾患.毛細血管レベルでの閉塞が主である.

    ④ 炎症  ・・・

    感染性血管炎と非感染性血管炎がある.
    感染は,菌(梅毒,結核など,ウイルス(ヘルペス,サイトメガロなど,真菌による.
    非感染とは,膠原病などによるぶどう膜炎の病型のつ.

    ⑤ そのた

    乳頭面では血管の屈曲が強い.血流が変化し,内皮細胞が傷害され血栓ができやすい.

    ★透過性亢進 (hyperpermeability) 図 46 血液関門

    正常な眼底血管は透過性が抑えられていることで組織圧が維持されている.血管透過性亢進の結果が浮腫である.浮腫とは組織間隙に溜まる体液ということであるが,網膜は間質成分が少なく浮腫に対する予備能力が乏しい.その上,浮腫が生じた際に効率よく浮腫液の回収が出来るようにはなっていないらしい.これにより,少量の水分貯留でも所見が出やすく,特に黄斑浮腫を生じ易いと考えられる.さらに,成分が濃縮され沈着あるいは食細胞に取り込まれた所見が硬性白斑になる.

    網膜血管に透過性亢進があれば網膜浮腫や網膜内のとなり,組織間隙が離解しやすい外網状層(〜外顆粒層)を中心に貯留する.黄斑部では胞様浮腫あるいは網膜離の形をとる.脈絡膜血管(実際は網膜色素上皮)の透過性亢進では,網膜下(視細胞層と網膜色素上皮層の間網膜)に漏出液が貯留する(これも浮腫と言う

    網膜浮腫感覚網膜がふやけている(おもに網膜血管の透過性亢進
    滲出性網膜離がある(おもに色素上皮の透過性亢進

    透過性(permeability)を規定しているのは,血液関門 のバリア機能である.バリア機能の破綻が透過性亢進すなわち,漏出である.これはフルオレセインナトリウムにより評価できる.眼底写真で関門機能をみるのが蛍光眼底造影検査ということになる.
    臨床では滲出漏出を厳密に区別することは殆んどない.関門の破綻が軽度のときは水分と電解質(漏出)が,高度になるとタンパクが加わる(滲出).低比重でも時間経過で濃縮されれば高比重になってくる(敢えて言うと,滲出液が漏出する,漏出液が滲出する,というような表現も許されていたりする)

     病理 では 】

    ⅲ.脈絡膜血管の循環障害
    ほとんどが網膜色素上皮外血液網膜関門の機能障害として遭遇する.
    これ以外は敬遠しておこう.

    ⅳ.潅流(灌流)か,環流か,還流か

  3. 網膜病変・般  【return

    1. 神経線維層欠損定型的には緑内障での神経線維層の萎縮・欠損所見となるが,高血圧網膜症でも(恐らく軟性白斑の跡として)観察されたりする.しかし,なぜか糖尿病網膜症での軟性白斑は,白斑消失後の神経線維層萎縮が分かりにくい.

    2.  赤色病変通常は出血 hemorrhage / bleeding と考えてよい.

      出血のかたち は,
      ①網膜前出血(即ち,神経線維層より前):貯留部位は,後部硝子体膜と内境界膜との間,および内境界膜と神経線維層との間である.内境界膜の上か下かの鑑別が必要になることがあるが,空間がないと薄く面状に広がり,網膜血管は血液で隠される.網膜面で赤血球が沈降し舟型 boat-shapedあるいは水平線 niveauを呈する.凝固しにくいためとのことである.
      ②網膜浅層出血:神経線維層の形(神経要素は水平構造になっている)により,火炎状 flame-shapedあるいは線状 streak-likeと呼ぶ「すじ状」を呈する.
      ③網膜深層出血:主に外網状層内(神経要素は垂直構造になっている)により,点状 dotあるいはしみ状 blotを呈する.点状 punctateの所見は毛細血管瘤との鑑別が必要である.
      ④網膜下出血:視細胞層と網膜色素上皮層の間,あるいは,暗赤色や褐色の膜をかぶせたような外観の色素上皮下の血腫を示す.

      図 47 出血型

      ざっくり云って,破綻性出血では表層出血,漏出性出血では深層出血となる.網膜前出血は硝子体出血として扱うこともある.しかし硝子体出血は網膜出血の延長では無い.
      時間経過で出血巣の外観は変化する.大量では赤血球が壊れヘモグロビンが失われると黄褐色となり,数か月の経過で吸収される.少量では変色は判然としないまま薄まり,吸収される.

      出血」とは血管内の赤血球が血管外の網膜組織内に存在する病態である.すなわち,溜まった血液 blood を指している.血管自体,血液,血流(循環)のいずれかが原因で起こる.
      病態の理解のために重要なのは出血源で,固有血管からの出血であるのか,新生血管からであるかで大きく違う.網膜固有血管からの出血は種々の病態で起こる.脈絡膜血管からの出血は難易度が高い.網膜新生血管は通常,合併症としての意味合いが多く,脈絡膜新生血管は疾患本態であることが多い.
      上のように「眼底出血」の診断に重要であるのはパターン認識であり,深くは脈絡膜出血,多いのは網膜出血,浅くは硝子体出血までを含む.小は点から大は血腫まで赤い成分は赤血球であり,出血 bleeding と言っても持続性・進行中の状態をさすのではない.あくまでも,溜まった赤いモノを見ているにすぎない.出血という病態表現で重要なことは,今まさに血が噴き出しているというようなものではないということである.実際,出血中に遭遇する確率は限りなく小さい(ゼロではないが,内視鏡で目撃するような消化管出血の比ではない).かくして,出血が止まったということと血(赤色)が消えたということも別の事となる.
      眼底の血管病変に対する検査として,蛍光眼底造影検査は臨床で重要な位置をしめている.こと「眼底出血」に関し,造影検査は出血部から血液と共に造影剤が出てくる状態をみるというような検査法ではない.
      では,血中の造影剤に対し画像上,出血斑(血管外の赤血球)はどのように写るのであろうか.

      ☞☞ 出血 は 】

      他の赤色所見
      出血以外では,血管の変形(特に毛細血管瘤は点状出血と紛らわしい,裂孔もしくは円孔が考えられる.毛細血管瘤はたいがい糖尿病(で可であるが,病理上は網膜血管の般的基本反応)だし,裂孔は網膜離の原因としての網膜裂孔あるいは円孔,加齢あるいは外傷による黄斑円孔がある.
      中心窩が赤い病態に cherry red spotがある.周囲網膜の白濁のためである.

    3.  黄白色病変:重要な白色病変は白斑で,軟性白斑硬性白斑 がある.

      軟性白斑 soft exudate(あるいは綿花様白斑 cotton-wool spot(s))は,前毛細血管細動脈の閉塞による網膜虚血を反映している.毛細血管床の虚血によって網膜神経線維(神経節細胞の軸索)が横断され,停滞した軸索流が膨化白濁として観察されたもの(cytoid body;細胞様小体)である.
      数か月の経過で消失し,痕として網膜や神経線維層の萎縮を残す,急性の病変である.
      軸索の膨化は般には浮腫であり、また exudate と言うが、透過性亢進を元とする滲出物ではない.

      図 48 軟性白斑1 図 49 軟性白斑2 図 50 軟性白斑3

      軟性白斑は,網膜表層に所見の場がある.混濁は,網膜血管の上にかぶさってみえることがある.
      陳旧化した所見として幅の狭い神経線維層萎縮を認めることがある.高血圧網膜症でよく起きるような気がする.

      cherry red spot 桜実紅斑:
       網膜(中心)動脈閉塞では眼底網膜(全体)が浮腫状に混濁する.この場合の浮腫も組織傷害による神経細胞の変性を表している.網膜動脈の栄養範囲である脳層が虚血混濁することで,中心窩には神経線維層を含む網膜脳層が無いため,眼底の赤い色が残る理屈である.なお,網膜全体が軟性白斑でおおわれたものと言えなくもないが,たぶん適切ではない.

      *軟性白斑を呈する疾患:
      【糖尿病網膜症,高血圧性網膜症,網膜静脈閉塞,膠原病(SLE)などの閉塞変化.眼虚血症候群,高安病,外傷性網膜血管症(Purtcher),etc.

      虚血があれば白濁・壊死をきたす,と理解してよい.しかし白濁するにはある程度の網膜厚が必要である.ということで,軟性白斑は後極部に観察される.周辺網膜は薄いので,混濁としては見えないのである.また軟性白斑が消えても,血行が回復したわけではない.蛍光眼底造影 を行えばこの部分は造影されず,暗く写ることで血行障害が証明されることになる.造影写真で透過性亢進による淡い過蛍光を「軟性白斑」と言っては不可ない.

      硬性白斑 hard exudateは,網膜血管(特に深層)の透過性亢進により血漿の漏出が起こり,その吸収過程で濃縮された脂質ないし類脂質などが沈着したり,マクロファージに貪食されたものである.この漏出こそ浮腫であり,すなわち沈着物は慢性に経過している浮腫の存在を示している.外網状層近辺の貯留であるが,大量のときにはしばしば網膜下にまわる.

      図 51 硬性白斑1 図 52 硬性白斑2
      図 53 硬性白斑3 図 54 硬性白斑4

      硬性白斑は外網状層に所見の場がある.細胞間隙が広いことと最寄の毛細血管が少々遠いため,と説明される.特に黄斑浮腫で吸収期にみえてくる硬性白斑は特徴的で,外網状層線維の配列(Henle線維)に従って放射状に並ぶ.星芒状白斑(star figure 星芒斑)である.360° 均等に光芒が出る事は少なく,透過性の変化に応じてあるいは血流量に従って沈着の濃淡が片寄って現われる.
      沈着物は濃縮し,あるいは貪食細胞に取り込まれた浮腫液の存在を示している.したがって,透過性亢進を示す病的血管を中心として浮腫が生じ,浮腫の縁に環礁状に硬性白斑が配列することが多い.その外観から輪状網膜症という.
      浮腫が強いもの(滲出が長期間)で融合してべったりとした所見が,蝋()様白斑 waxy exudateである.この場合,網膜下腔への貯留となる.

      *硬性白斑を呈する疾患:
      【糖尿病網膜症,高血圧性網膜症,腎性網膜症,Coats病などの滲出変化.

      蛍光眼底造影 を行えば,硬性白斑の近傍で蛍光色素の漏出部が証明される.しかし,沈着物硬性白斑そのものに造影剤が付着し発光することはない.

      ドルーゼン drusenは網膜色素上皮とBruch膜間に沈着した網膜色素上皮由来の代謝廃棄物リポフスチンである.組織学的にはhyaline様物質と表現される.①黄斑にみられるパターン,②周辺に見られるパターン,があり,特に黄斑に見られるタイプについては,外見によって軟性ドルーゼン軟性ドルーゼンを区別する.まれに③後極全体 に認める.なお周辺部に観察されるドルーゼンはほぼ硬性ドルーゼンのようである.

      図 55 どるーぜん1 図 56 図 57 図 補

      OCTによると色素上皮の上になにやら凸凸と描出されるドルーゼン様の所見がある.reticular pseudodrusenとかで特に後極に多いと云われるが,見た目では上右写真が似ているようだ(当方にはOCT画が無い.

      .そのほか,
      グリア(Müller細胞・星状膠細胞)や線維膜または新生血管を含む増殖組織,滲出した炎症細胞による混濁(ぶどう膜炎),網膜色素変性や高度近視の萎縮変性巣も重要である.小さい網膜有髄神経が軟性白斑様にみえることがある.

    4.  黒色病変:黒色あるいは褐色病変は通常,網膜色素上皮や脈絡膜の色素沈着 pigmentationを示す.色素異常は原発性にせよ続発性にせよ,網膜色素上皮病変ならびに脈絡膜病変で観察される.
      先天性でみられる所見は,肥大 hyperplasia色素母斑 naevusである.

      図 58 色素上皮肥大① 図 59 色素上皮肥大② 図 60 色素性母斑
      図 61 何かな 図 62 網膜色素変性

      多くは続発性の反応所見で,網脈絡膜萎縮とか網脈絡膜変性という.原発病変について検討することになる.このような場合,色素が散乱する.よって,色素沈着 hyper-pigmentationと 脱色素 de-pigmentationとは共存・隣接して観察されることになる.

    5. 網膜外層(神経上皮層)は細胞間隙と同等にみなされ,浮腫や深層出血が生じる場である.浮腫が生じる部位を cystoid space と言ったりする.結果,硬性白斑が沈着する部位(外網状層〜外顆粒層)となる.OCTに拠ると,当該部位を中心とした高反射像により硬性白斑沈着を示すことができる.

  4. 黄斑病変  【return

    a.眼底の血管病変では,容易に黄斑浮腫を来たす.
    黄斑浮腫の形態には大きく種類がある.①硬性白斑,②類胞変性,③網膜離,である.

    ①硬性白斑:軽度な浮腫では放射状の神経要素(外網状層)に沿って硬性白斑が配列する.星芒状白斑である.
    高度になると網膜下に沈着性の大きな白斑となる.様白斑である.この場合,網膜はび漫性にもしくは黄斑から離れて透過性亢進の強い病変があり,浮腫が黄斑にまで波及する状況である(  白斑 に戻る)
    ②中心窩の網膜浮腫は網膜内(Henle線維層)に貯留空間を作り,類胞となる.この場合,中心窩周囲の毛細血管が特異的に拡張透過性亢進を来たす病態である(胞様黄斑浮腫 蛍光眼底造影での 解釈シェーマ)

    図 63 図 64 図 65 OCT

    ③進行が急速な場合,網膜下に貯留し滲出性網膜離となる.この場合,通常は脈絡膜がわに病変があるが,状況によっては網膜血管の透過性亢進でも離をきたし得る.

    bBruch脈絡毛細血管板病変

    ①色素上皮離,②脈絡膜新生血管,③ドルーゼン,④種々のジストロフィ,など

    c.視細胞網膜色素上皮病変

    ①種々のジストロフィ,など

    d.網膜病変

    ①近視性あるいは加齢変化としての網膜変性もしくは網膜分離,など

    e.硝子体網膜境界病変

    ①黄斑前膜,②硝子体牽引症候群,③黄斑円孔,など

    f.いわゆる 黄斑出血

    原因として,まず脈絡膜新生血管を疑う.例外はあるが ・・・・・

    g.毛細血管閉塞

    中心窩周囲は 末梢型 の毛細血管パターンである.潅流圧が不足すると毛細血管は閉塞し,無血管野が拡大する.

  5. 周辺部病変

  6. 注釈

    ジストロフィ遺伝的に決定された内因(原発性 primary)で,ゆるやかに萎縮・退化・変性がおこる.進行性,両眼性,左右対称性を示す.

    変性加齢,炎症,循環障害などの外因(続発性 secondary)で,萎縮・変性がおこる.本来は機能障害を含めるが,眼底で小さい変性巣では機能変化の確認がとれないのはよくあること.加速された加齢変性とも解釈できる.

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§ 硝子体との相互関係 vitreoretinal interface

図 66

後部硝子体は,網膜との接着が強い部分がある.
①視神経乳頭周囲,
②黄斑周囲,
③網膜血管周囲,
④赤道部,
である.①②③は,Müller細胞基底膜と硝子体線維とが接合していることに因る.

♣ 後部硝子体皮質前ポケット
後極部血管アーケードに囲まれた約3乳頭径ほどの領域には,液化腔が存在する.黄斑網膜の表面には薄い硝子体皮質が後部硝子体膜(ポケット後壁)となっている.
黄斑前膜や黄斑円孔の形成は,ポケット後壁が病変の場となると考えられている.後部硝子体離では,高率にポケット後壁が網膜面に残るらしい.

図 67 ぽけっと 図 68 OCT図

網膜新生血管はポケット後壁を足場として,視神経乳頭アーケード血管から硝子体中へ発育する.その定型が,増殖糖尿病網膜症ということになる.

♣ 反応の場としての関与
a.硝子体細胞マクロファージ系細胞で,網膜面近くで活性化する.
b.サイトカイン などVEGFVPF,TGF-β,などの発現.

§ 血管新生 intraocular neovascularization

血管新生angiogenesis(増殖)は例えば創傷治癒過程では必須の反応であるが,眼内では基本的に悪性の反応である.図式的には,低酸素状態で基底膜の損傷と血管新生促進因子の分泌がおきる.虚血網膜が発する増殖因子の標的は,視神経乳頭,血管アーケード,毛様体,虹彩,隅角部である.網膜面では網膜内の毛細血管構築が変わる部分,視神経乳頭ではぶどう膜と網膜循環の接点となる部分,ぶどう膜では後毛様動脈系循環の接点といった共通項があるようにみえる.これに硝子体が加わる.増殖した血管内皮細胞は,遊走管腔形成へ至る.すなわち,既存血管(特に静脈側)から生えたものである.
ⓐ増殖網膜症 や ⓑ脈絡膜新生血管 では血管内皮増殖・線維芽細胞増殖が中心となり,線維血管膜 fibrovascular membraneを形成する.これらの血管の増殖反応は,網膜では硝子体方向へ,あるいは脈絡膜から網膜下へ向かう方向のベクトルが同じという共通点がある.ときに,脈絡膜血管が網膜血管に接続したりする(加齢黄斑変性

図 69 図 70

◐ 血管新生緑内障 neovascular glaucoma / rubeotic glaucoma
虹彩ルベオーシスや隅角ルベオーシスは眼内新生血管の好発パターン.

◒ 毛様体新生血管
低眼圧になる.

◑ 新生血管黄斑症 neovascular maculopathy
臨床的には網膜病変のながれで解釈するが,新生血管発生の場は脈絡膜である(脈絡膜新生血管)

◓ 血管新生因子
血管新生因子は複数ある.
VEGF血管内皮増殖因子は網膜ではグリア細胞・色素上皮細胞から放出され,網膜の維持に働いている.方で抑制因子が存在し,病的な血管新生は起こらない.この恒常性がくずれることで血管新生が誘発されると考える.
脈絡膜新生血管では,おもに網膜色素上皮細胞とマクロファージがVEGFを産生するらしい.他方,ドルーゼンは慢性炎症の存在を示し,ドルーゼンの構成成分(補体などの集合体)は増殖因子産生の刺激となる.炎症で遊走されたマクロファージはドルーゼン処理に作用する方で新生血管発生を促進させる.
網膜新生血管では,血管内皮細胞・Müller細胞・神経系細胞にVEGF活性の元があるらしい.

 病理 では 】

§ 眼底の加齢変化 aging

加齢変化は,視機能を損なわないレベルの生理的所見である.
いわゆる,正常範囲を規定することは重要ではあるが,眼底所見は数値化がならず,所見の把握が主観に左右されるのは日常茶飯である.
これらを踏まえて

(1) 網膜表面反射・血管反射

検眼鏡所見・眼底カメラ所見とも,表面反射がにぶくなり,特に輪状反射が消える.中心小窩反射も不明瞭となる.
網膜血管も,血管自体の退行変性と網膜表層反射の減弱が加算され,みずみずしさが無くなり,金属様の反射を示す.ただし,
これらの所見は,水晶体再建により短波長成分を含めてだいぶ若返らせることができる.加齢水晶体の影響は大きいものと思われる.

(2) 脈絡膜所見

網膜色素上皮・脈絡膜のメラニンが減り,赤味を帯びる.
(照明光や透光体加齢変化にも左右される
脈絡膜血管が徐々に強調され,紋理(豹紋状 tigroid)となる.

(3) 視神経乳頭周囲

乳頭周囲は萎縮・色素脱出し,輪状にうすい色調を示すことがある.

(4) 黄斑部

網膜色素上皮とBruch膜間に沈着した網膜色素上皮由来の分解代謝産物が蓄積し,hyaline様物質として黄白色の塊を作る.
ドルーゼン drusenである.
(元はドイツ語,英語圏でもそのまま使用される)

(5) 写真

●右図・上は,①豹紋状眼底,②輪状反射の消失,③網膜表面反射の消失,など.
●右図・中は,視神経乳頭周囲の脈絡膜萎縮を示す.
(なお,黄斑部病変は硬性ドルーゼンないし黄斑症
●右図・下は,黄斑の軟性ドルーゼン.

(6) 動脈硬化

眼底血管の動脈硬化は,細動脈硬化である.
この続きは, ここで

(7) 組織変化

神経網膜には,あまり大きな変化はないといわれる.神経細胞に脂質・リポフスチンが貯まる.血管硬化のほか毛細血管閉塞が起きる.視細胞核が本来の外顆粒層の範囲を超えて外網状層やら視細胞層へはみ出す所見がみられるとのこと.基底膜の肥厚は例外ではないらしい.

図 71
図 72
図 73
   

§ 網膜色素上皮の問題  retinal pigment epithelial cells

網膜色素上皮細胞は,体細胞の中で代謝の最も活発な組織のひとつである.

  1. 機能

    ・視細胞間と色素上皮間の接着,水輸送
    ・血液網膜関門と栄養の授受
    ・レチノール(vit A)その他の視細胞代謝(外節の貪食,など
    ・色素 ・・・・・・・ メラニン顆粒(遮光
       ・・・・・・・ リポフスチン顆粒(代謝産物,すなわち加齢
    ・サイトカインの分泌 ・・・・・ VEGF,FGF,TGF-β,PDGF,インターロイキン,インターフェロン
      VEGF:血管内皮増殖因子
      TGF-β,プラスミノーゲンアクチベータインヒビタ-1 (PAI-1)など:血管新生抑制因子
    ・「グリア」としての位置づけがある.

  2. 視細胞と網膜色素上皮との接着

    神経網膜は網膜色素上皮に押し付けられている.硝子体圧眼圧による.脈絡膜の()浸透圧.網膜色素上皮細胞のポンプ作用.これらにより網膜下腔は陰圧となり,さらに中から外へ向かう水の移動がある.
    細胞間隙に接着成分が存在する.
    視細胞外節と色素上皮細胞とは,かみ合う構造になっている.

    図 74

  3. 色素上皮細胞の増殖と遊走

    ・神経網膜が変性や炎症で萎縮荒廃すると,色素上皮細胞が増殖して色素沈着をつくる.
    ・脈絡膜新生血管が生じると,色素上皮細胞が増殖して囲い込むような形をとる(これにより血管新生を抑制するらしい

    ・裂孔原性網膜離のとき,色素上皮細胞が硝子体中へ散布されることがある.
     硝子体中へ遊走した網膜色素上皮細胞は線維芽細胞状に変化(化生上皮間葉転換)する.あわせて,
     増殖因子に反応した感覚網膜内のグリア細胞も線維芽細胞化することで進行する病態が増殖硝子体網膜症である.

    ・実験的な増殖では周辺細胞のほうが活発だそうである.黄斑下細胞は光ストレスで弱っているのかな.

  4. 加齢,メラニンとリポフスチン,ドルーゼン

    ●加齢 agingとは,物を見る光を浴びる,という宿命により,生直後から進行する連の成長〜成熟〜老化のプロセスを包括する.

    ●形状・遊走
    本来の六角形であるのが不整形細胞が増えるとのこと.脱落した細胞の穴埋めの時にいびつになる,と説明される.
    増殖した色素上皮細胞は網膜内に遊走する.

    ●メラニン melanin
    チロシンというアミノ酸からできる.加齢と共に減少する.
    色素として光の吸収や散乱防止作用がある方で,光曝露により活性酸素を発生し網膜色素上皮を障害するという.

    ●リポフスチン lipofuscin
    加齢と共に増える残渣沈着物(消耗色素)で,メラニンの代謝産物や貪食された視細胞外節が消化されずに色素上皮細胞内に残ったもの.青色領域(430nm)を吸収することで光曝露により活性酸素を発生し,細胞傷害性に作用する.
    色素上皮細胞が萎縮しBruch膜に蓄積した代謝物や脂質がドルーゼンになる.自発蛍光の元.
    自発蛍光という特性が網膜色素上皮細胞の病態の情報になることで,加齢黄斑変性の早期変化や網膜色素変性の進行状況などの把握のモノサシとして期待される.

  5. 視細胞色素

    ●キサントフィル xanthophyll
    黄色のカロチン類(カロチノイド)で,黄斑色素と呼ばれるのはルテインとゼアキサンチンの2種.黄斑の名の元.
    緑黄色野菜,トウモロコシ,多種のフルーツおよび花の中にも存在する天然色素.卵黄の色も決定する.
    短波長に対するフィルタ効果,抗酸化作用(ラジカルの消去)など.喫煙加齢により減少.
    同類のアスタキサンチン(赤色)は非常に強い抗酸化作用があり,ルテイン・ゼアキサンチンとも容易に血液網膜関門を通過する,とのことである.
    カロチンは独逸語系,カロテンは英語系の表記.

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2019