主な研究のご紹介

胃癌の発癌メカニズムの解明

胃癌の罹患率はなお高く、治療法の開発と共に発癌機構の解明による予防が待たれている。最近、DNAメチル化、small RNA、ヒストン修飾の他、クロマチンリモデリング因子もエピジェネティックな遺伝子発現調整機構として注目されている。クロマチンリモデリング因子は核クロマチンの構造を変化させ、発生・細胞の分化、遺伝子発現の調節に関わっている。これらエピジェネティックな機構を中心に胃癌の発癌機構の解明、そして、胃癌の予防に寄与することを目標としている。

中皮間葉転換を起点とする播種微小環境形成メカニズムの臓器横断的解明

播種巣の癌微小環境については未解明な部分が多いが、最近は中皮間葉転換によって腫瘍間質に動員される中皮細胞の機能が注目されている。我々は、消化器癌、肺癌、境界悪性腫瘍を含む卵巣腫瘍を対象に、原発巣の漿膜浸潤部および播種巣における中皮間葉転換を詳細に検討し、中皮間葉転換を誘導する因子としてエクソソームに着目している。播種微小環境における中皮間葉転換の意義を詳細に検討し、播種予測因子の同定、さらには予防および治療法の開発を目標とする。

骨軟部腫瘍における細胞診の有用性に関する研究

骨軟部腫瘍の細胞診は、良悪判定の難しさや多彩な組織型の存在から、有用性に統一見解はない。我々は良悪判定に拘らず、適切な鑑別疾患を挙げることが重要と考えている。紡錘形細胞腫瘍・小円形細胞腫瘍・粘液性腫瘍等に大分類した上で、過去に報告された所見に加えて新たな所見の存在を詳細に検討することにより、組織診では捉え難い細胞診ならではの特徴的な細胞所見を呈する組織型の存在が分かってきた。細胞診の独特な診断プロセスにより推定可能な組織型を抽出し、総合診断ツールの1つとして有用性を確立することを目標としている。

臨床的予後を規定する胃癌間質の解明

進行胃癌は依然として予後不良である。癌間質は、癌の進展に重要な役割を担っており、進行胃癌の治療ターゲットとして注目されているが、研究は難渋している。その理由の一つに、癌間質が多様な細胞集団で構成されていることが挙げられる。これら多彩な性質を持つ癌間質の構成成分の中から、悪性度や予後に直結する因子を探索している。

業績集

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年