原発性副甲状腺機能亢進症その4

 さて、皆様が関心をもたれている手術の方法についてご説明いたします。
 現在、普通に行われている手術は首の傷が数cm以上と大きく,手術後の痛みや不快な症状も多く,お家に帰られた後も首の皮膚が「ちくちくする」、「さわった感じが分からない」、「物を食べるときに首の皮膚がひきつれる」、などという不愉快な症状を訴える方がかなりおられます。


普通に行われている手術の傷

 


手術後の皮膚のひきつれ

 しかし,私達のグループは、「小切開副甲状腺切除術」と「内視鏡下副甲状腺切除術」という画期的な手術方法を開発し,これを多くの患者様に行い、日本国内、諸外国で良い評判をえております。
 特に、「小切開副甲状腺切除術」は首の約2cmの傷から副甲状腺を切除するものです。この術式は切開創が短いばかりでなく、皮下や筋肉などの組織もできるだけ切離しない方式ですので、患者様に優しい、愛護的な手術です。よって、手術後の不愉快な症状は非常に少なく、早期退院が可能です。

小切開法による2cmの傷

 しかし、この小切開副甲状腺切除術を行うには、つぎの技術が必要となります。
  その一つは「術中迅速副甲状腺ホルモン測定」です。きわめて小さい傷から副甲状腺腫を摘出するため、ほかの副甲状腺の大きさを見ることが困難です。時に、ほかの副甲状腺も腫大していることがあります。このようにほかの副甲状腺腫を見落としてしまっては完治したとはいえず、もう一度の手術(再手術)が必要となります。 このようなことを防ぐため、当グループでは術中迅速副甲状腺ホルモン測定を行っております。約10分で測定でき、副甲状腺ホルモン値が正常に戻れば手術は成功したといえます。現在(2003年12月)、この検査方法を用いているのは、日本では当グループだけです。
 また、副甲状腺腫の部位がはっきりしない場合、再手術で副甲状腺腫の検索が困難な場合などでは、MIBIという副甲状腺腫によく集まるアイソトープを使って、手術中にガンマプローベ、小型ガンマカメラなどで、副甲状腺腫の部位を探す方法があります。これも当グループではほかの施設に先駆けて開拓しています。

 一方、「内視鏡下手術」には2種類あります。1つ目は脇の下(腋窩)から行うものです。
 2つ目は前胸部から行うものです。ともに、首に傷がなく、手術して2−3ヵ月たつと多くの方では首の症状は消失します。特に腋窩法では傷がご本人,周りの方からも見えないため,手術という嫌悪感から開放され、手術を受けたことを忘れてしまう方もお見受けします。もちろん,水着も自信をもって着ることができます。しかし、副甲状腺手術では、取り出す腫瘤が小さいため「小切開副甲状腺切除術」が第1選択となります。


脇の下(腋窩)からのアプローチ

前胸部からのアプローチ


 私達は1999年7月よりこれらの手術を行っており、十分な経験を積んでおり、手術合併症も今までの手術術式と同じくごく僅かなものです。手術合併症は反回神経麻痺によるしわがれ声、副甲状腺機能低下症による手指・口唇のしびれ感などが考えられますが、その出現する頻度はごくまれです。

 

その3