原発性副甲状腺機能亢進症その3

2) 副甲状腺機能亢進症(つづき)

検査と診断
 首に副甲状腺の腫瘤(こぶ)を触れたりすることは殆どありません。
 健康診断の血液検査でカルシウムが高いため、発見されることもしばしばあり、このときには早期発見で結石や骨症状が見られない早期発見のことが多いです。しかし、再発する腎・尿路結石や骨粗しょう症による骨折や骨の治療中に見つかることもあります。また血液検査でカルシウム値が高く、リンが低値、アルカリホスファターゼが高値という組み合わせがあれば、ほぼ副甲状腺機能亢進症にまちがえなく、血中副甲状腺ホルモン(PTH)が高値になれば、診断は確定します。
 治療をするにあたり、4個ある副甲状腺のどれが腫大しているかを調べる必要があります。超音波検査(エコー)がよく、アイソトープ検査としてMIBI(ミビ)シンチグラムも必要に応じて行います。また、CT検査、MRIなどの画像診断も行うことがあります。骨密度をみるために骨CT検査も行います。しかし、これらのすべての検査は非侵襲性、すなわち痛みを感じることなくできます 。

治療と予後
 こうして腫大している副甲状腺が見つかった場合は、その腫大した副甲状腺を摘出します。
ごくまれに、2個以上の腫大している過形成の場合には腫大している副甲状腺だけを摘出するか、4個の副甲状腺をすべて摘出し、そのうち約60mgを首や腕に移植する方法もあります。しかし、いずれにしても、治療には手術が最もよい手段です。ただし、血中のカルシウム値の上昇が軽く、症状がない場合には薬剤による治療も行われることがあります。また、PEITといい、超音波下に細い針でアルコールを腫大した副甲状腺腫に注入し、副甲状腺腫を縮小させる方法もありますが、特殊な時以外には推奨できる治療法ではありません.
 手術は全身麻酔で行われ、普通は術後5日目ぐらいまでに退院できます。ご希望によっては1日程度の入院も可能です。ご家族の付き添いは不要です。手術翌日から歩行、食事などができ、ほぼ、普通の日常生活に戻ります。また、退院の翌日からは全く普通の生活(仕事)ができます。
 手術の合併症(手術による障害)は主に2つあります。その第1は、手術による腫大した副甲状腺腫をとったため、手術後2―4日目に一時的に血中カルシウム値が低下します。その症状は口唇、手指がしびれたり、こわばったりすることです。また、胸が苦しくなるような症状もあります。いずれにしても、今まで経験したことのない症状です。もしおきたときにはカルシウム剤を注射、あるいは内服すれば消失し、心配することはまったくありません。普通は1−2週間以内で薬を飲む必要がなくなります。
 第2は、甲状腺の背面を通り、副甲状腺腫に接している反回神経麻痺による嗄声(させい、しわがれ声)です。この反回神経は副甲状腺のごく近くを通るため、副甲状腺腫摘出に際し軽度の手術的侵襲を受けただけでも軽い嗄声がおこります。また、近くにあるため副甲状腺腫に浸潤していることもあります。そのときには一部を削ったり、切離しなくてはなりません。通常は、嗄声に対してビタミンB12剤を飲んでいただきます。多くの方は手術の後、3ヵ月程度で嗄声はほぼ改善します(誤飲はもっと早く治ります)。しかし、腫瘤の部位によっては反回神経を切離しなくてはならないことがたまにあり、このような方は嗄声は改善方向には向かいますが、完治できないことがあります。
 退院時、骨密度の改善のためにお薬をお出しすることもあります。これは骨を良くする(骨塩量の増加を目指した)薬であり、副作用はほとんどなく、健康剤のような感じでお飲みになってください。また、傷がきれいになるお薬を処方することもあります。
 外来の受診は術後1,2,3,6ヵ月目程度であり、手術のことを忘れてしまう方がほとんどです。
 腎・尿路血症は再発したり、大きくなったりすることはありませんが、今ある結石については泌尿器科を受診し、治療を受けてください。また、骨粗鬆症はこの手術によって進行を止められる場合が殆んどです。余り進行していない場合には、骨密度は改善し、骨の症状も改善・消失します.。ただ、治療が遅れた場合には、腎臓の機能が悪化したり、病的骨折を繰り返したりすることがあります。

その2

その4