細胞が傷害されると適応(修復)しようとする.その過程での細胞・組織の機能低下や形態学的変化が退行性病変である.病理学の立場では,原因が取り除かれると元通りに復活しうる状態,可逆変化を云っている.しかし眼科領域で神経要素の場合,ほとんどが回復の余地はない.
regressive change 退行変性
一度は正常に発育した臓器・組織・細胞が,体積の減少をきたす状態.たいていが機能低下を伴う.
種類は単純萎縮と数的萎縮がある.原因により生理的萎縮・飢餓萎縮・廃用萎縮・圧迫萎縮・神経性萎縮・ホルモン萎縮がある.
はじめから正常の大きさに達しないときは低形成 hypoplasia,高度な状態だと無形成 aplasia,原基すらないものが無発生 agenesisである.
傷害を受けた細胞・組織が異常物質の沈着あるいは正常成分の減小などで,機能的・形態的に変化した状態.壊死にならない段階・細胞死に至らない程度での所見で,通常は機能低下する状態である.亢進状態になる場合もある.
細胞の変性
細胞間質の変性
物質代謝障害
☆ジストロフィ dystrophy
遺伝的要素による変性疾患.進行性,両眼性,
☆細胞間質 ∕ 細胞外マトリクス extracellular matrix
【 こちらで 】
細胞と細胞のあいだ(細胞間質)は,支持組織の線維と基質が詰まっている.上皮細胞・血管内皮細胞・筋細胞などにある基底膜や,膠原線維・弾性線維・細網線維が構造タンパクである.基質は無構造でプロテオグリカン(ムコ多糖とタンパクの結合体)・ラミニン・フィブロネクチンなど,多糖類とタンパクを含む.
ネクローシス | アポトーシス | |
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要 因 | 病理的 非生理的 火傷 毒物 虚血 補体攻撃 細胞融解性ウィルス感染 放射線照射 過剰な薬物 |
病理的 生理的 ホルモン異常 増殖因子の除去 細胞障害性T細胞の攻撃 HIV感染 放射線 温熱 制癌剤 |
過 程 | ミトコンドリアや小胞体の膨化 イオン輸送系の崩壊 細胞膜の破壊 リソソーム酵素の活性 炎症反応あり |
細胞体積の縮小 ヌクレオソーム単位のDNA断片化 貪食される 炎症反応なし |
特 徴 | 受動的 (遺伝子非依存性) ATP非依存 蛋白合成不要 組織内で一斉に発現 比較的長時間に漸次進行 |
能動的 (遺伝子依存性) ATP依存性 蛋白合成必要 組織内で散在性に発現 短時間に起こる |
局部的な,細胞・組織の死・崩壊.凝固壊死,融解壊死のかたちがある.
壊死巣は,異物として処理される.
・小さい部分では.そのまま吸収・修復される場合や,空洞や囊胞となる場合(要するに穴があく)がある.
・皮膚や粘膜では,浅いものはびらん(糜爛),深いものは潰瘍となる.
・広い範囲になると,肉芽組織に置き換わる.器質化という.これは瘢痕組織になる.
【 増殖と修復 】
2022