1.退行性病変(物質代謝障害

  1. 萎 縮

  2. 変 性

    1. 細胞の変性

    2. 細胞間質の変性

    3. 物質代謝障害

  3. 細胞の死

図 01病変

細胞が傷害されると適応(修復)しようとする.その過程での細胞・組織の機能低下や形態学的変化が退行性病変である.病理学の立場では,原因が取り除かれると元通りに復活しうる状態,可逆変化を云っている.しかし眼科領域で神経要素の場合,ほとんどが回復の余地はない.
regressive change 退行変性

■萎縮 atrophy

度は正常に発育した臓器・組織・細胞が,体積の減少をきたす状態.たいていが機能低下を伴う.
種類は単純萎縮と数的萎縮がある.原因により生理的萎縮・飢餓萎縮・廃用萎縮・圧迫萎縮・神経性萎縮・ホルモン萎縮がある.

はじめから正常の大きさに達しないときは低形成 hypoplasia,高度な状態だと無形成 aplasia,原基すらないものが無発生 agenesisである.

■変性 degeneration

傷害を受けた細胞・組織が異常物質の沈着あるいは正常成分の減小などで,機能的・形態的に変化した状態.壊死にならない段階・細胞死に至らない程度での所見で,通常は機能低下する状態である.亢進状態になる場合もある.

  1. 細胞の変性

    • 混濁腫脹水腫性変性細胞自体の代表的変性.水分の貯留(水腫),小胞体腔の拡張,ミトコンドリアの腫大,などによる.
    • 粘液変性糖タンパクが細胞内に沈着.
    • 硝子滴変性細胞内の小顆粒.
    • 脂肪変性細胞内の脂質(中性脂肪・コレステロール・等)の過剰沈着
    • そのた,空胞変性,角質変性,グリコーゲン変性
  2. 細胞間質の変性

    • 硝子あるいはヒアリン hyaline変性変性タンパク成分の細胞間あるいは結合組織での沈着.病理組織上,均質・無構造にみえる.高血圧による細動脈壁病変で.
    • 類線維素あるいはフィブリノイド fibrinoid変性線維素様タンパクが主に膠原線維を変性させる.膠原病あるいは自己免疫疾患で.
    • アミロイド amyloid変性アミロイド蛋白(構造の異常)の細胞間沈着を来たす.遺伝代謝疾患のほか,炎症に続発するものがある.
    • 石灰化 calcification細胞死を示唆する.大動脈の粥状硬化で.
    • 色素沈着 pigmentation
  3. 物質代謝障害

    • 糖代謝異常 糖尿病(diabetes mellitus),ムコ多糖蓄積症(mucopolysccharidosis)
    • 脂肪代謝障害 脂質異常症(dyslipidemia 高脂血症),肥満,アテローム硬化症,脂質蓄積症(lipidosis)
    • たんぱく質代謝障害 アミロイドーシス(家族性アミロイドーシス,免疫細胞性アミロイドーシス,反応性アミロイドーシス,など),フィブリノイド変性,尿酸代謝障害(痛風;プリン・・核酸の構成成分),
    • 無機質代謝障害 カルシウム結石,鉄,銅,
    • 色素代謝障害 メラニン,リポフスチン,

☆ジストロフィ dystrophy
 遺伝的要素による変性疾患.進行性,両眼性,

☆細胞間質 細胞外マトリクス extracellular matrix 【  こちらで
 細胞と細胞のあいだ(細胞間質)は,支持組織の線維と基質が詰まっている.上皮細胞・血管内皮細胞・筋細胞などにある基底膜や,膠原線維・弾性線維・細網線維が構造タンパクである.基質は無構造でプロテオグリカン(ムコ多糖とタンパクの結合体)・ラミニン・フィブロネクチンなど,多糖類とタンパクを含む.

■細胞死 cell death

ネクローシスアポトーシス
要 因 病理的  非生理的
火傷 毒物 虚血 補体攻撃
細胞融解性ウィルス感染
放射線照射  過剰な薬物
病理的  生理的
ホルモン異常 増殖因子の除去
細胞障害性T細胞の攻撃
HIV感染 放射線 温熱 制癌剤
過 程 ミトコンドリアや小胞体の膨化
イオン輸送系の崩壊
細胞膜の破壊 リソソーム酵素の活性
炎症反応あり
細胞体積の縮小
ヌクレオソーム単位のDNA断片化
貪食される
炎症反応なし
特 徴 受動的 (遺伝子非依存性)
ATP非依存  蛋白合成不要
組織内で斉に発現
比較的長時間に漸次進行
能動的 (遺伝子依存性)
ATP依存性  蛋白合成必要
組織内で散在性に発現
短時間に起こる
(引用:病態病理学2004)
■壊死 necrosis

局部的な,細胞・組織の死・崩壊.凝固壊死,融解壊死のかたちがある.

壊死巣は,異物として処理される.
小さい部分では.そのまま吸収・修復される場合や,空洞や囊胞となる場合(要するに穴があく)がある.
皮膚や粘膜では,浅いものはびらん(糜爛),深いものは潰瘍となる.
広い範囲になると,肉芽組織に置き換わる.器質化という.これは瘢痕組織になる.  増殖と修復

 ページ始に戻る 

2022