症状 / 検査と診断 / 治療

治療:
治療法には内服薬,放射性ヨード、手術の3つがあります。

1) 甲状腺薬:
 バセドウ病の方はまず内服薬治療からはじめます。甲状腺ホルモンの合成を抑える薬(抗甲状腺薬:メルカゾールあるいはチウラジール、プロパジール(PTU)をきちんと内服することが大事です。特に、妊娠されている方にとっても最適の治療法です。内服後3−5ヵ月で甲状腺機能は正常化し、抗TSHレセプター抗体も陰性化してくると薬も中止できます。しかし、多くの方は1年以上薬を飲みつづけるのが普通です。
 脈が速いときにはベータ遮断薬(インデラル)を処方します。この他、状況によって、ヨード薬、リーマス(抗精神薬)などをお飲みいただきます。
 一度、甲状腺機能が正常になっても再発することがある

 この注意は重要ですので必ず読んでください。

抗甲状腺薬の副作用:
 薬を飲み始めてしばらくの間に、白血球が減少することが稀にあります。のどが痛くて高熱の出た時は、薬を直ちに中止して白血球の数を調べてもらって下さい。白血球数が3000以下になっていれば即日入院が必要です。じんま疹〔薬疹〕
が出たときには抗ヒスタミン剤を飲みます。他の薬と併用されてもかまいません。肝機能障害や関節痛もたまに見られます。

2) 放射性ヨード:
 ヨードの放射性同位元素の働きで甲状腺の細胞を破壊していくわけです。治療後3−5ヵ月で機能は正常化しますが,逆に低下しすぎることが多く,その調節が難しいのが現状です。手術の後に再び再発された方,薬で治りにくい方などにお勧めしますが,妊娠中の〔可能性のある〕方は不適切です。

3) 手術:
 抗甲状腺薬で効果が上がらない方、甲状腺腫の大きい方,甲状腺腫を合併している方,などにお勧めします。全身麻酔で,入院期間は1週間程度、退院直後から日常生活が無理なくできます。このときには、手術前約1-2週間にわたりヨード薬をお飲みいただくことがあります。手術後は直ちに甲状腺機能は正常化しますが、その後何年かたち再発することがあります。
手術法については、低侵襲性手術である「小切開甲状腺切除術」という画期的な手術方法を開発し,多くの患者様に行い良い評判をえております。また、国内・国外からも高い評価をえています。
 「小切開甲状腺切除術」は首の約3cmの傷から甲状腺を切除するものです。普通の手術に比べ、甲状腺周囲の組織の剥離も少なく手術後の疼痛などの不愉快な症状は非常に少なく、早期退院が可能です。この方法は甲状腺腫がそれほど大きくない患者様が適応となります。しかし、甲状腺腫が大きい場合には、首の傷も大きくなる可能性がありますが、それでも普通に行われている手術と比較しますと、明らかに傷口は小さく、首の不快な症状は少ないのが現状です。
 手術の合併症(手術による障害)は主に2つあります。第1は、甲状腺の背面を通っている反回神経麻痺による嗄声(させい、しわがれ声)の可能性です。この反回神経は甲状腺に密着しているため、甲状腺切除に際し軽度の手術的侵襲を受けただけでも軽い嗄声がおこります。また、甲状腺腫に浸潤していることもあります。そのときには一部を削ったり、切離しなくてはなりません。もしも、嗄声や誤飲が起きた場合にはビタミンB12剤を飲んでいただきます。多くの方は手術後、3ヵ月程度で嗄声はほぼ改善します(誤飲はもっと早く治ります)。しかし、切離した場合は永続的に症状が残ることもあります。また、左右の反回神経を損傷されるとのどの声帯が半固定され、呼吸困難となり気管切開が必要となることもあります。
その第2は、甲状腺の背面にある副甲状腺(甲状腺の左右に計4個ある)が甲状腺と一緒に摘出されると、手術後に一時的に血中カルシウム値が低下することがあります。その症状は口唇、手指がしびれたり、こわばったりすることです。また、胸が苦しくなるような症状もあります。いずれにしても、今まで経験したことのない症状です。これはカルシウム剤を注射、あるいは内服すれば消失します。普通は1−2週間以内で薬を飲む必要がなくなりますが、4個の副甲状腺が摘出された場合には永続的に内服を続けることもあります。
このような手術の合併症は腫瘍が大きくなるにしたがい、おこりやすくなります 。

 退院時は原則として、甲状腺に関するお薬は不要です。傷がきれいになるお薬やカルシウム剤、ビタミンD剤などを処方することがあります。
外来の受診は術後1,2,6ヵ月目程度であり、そのたびに採血して甲状腺機能を測定します。