原発性副甲状腺機能亢進症その2

2) 副甲状腺機能亢進症

どんな病気か
 副甲状腺が腫大して(腫れて)、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態です。骨からのカルシウム吸収、腎尿細管でのカルシウム再吸収、小腸からのカルシウム吸収などの亢進により、血液中のカルシウムが増え、血液中のカルシウム値が高くなります。それとともに、尿細管でのリン再吸収の抑制によるリンが低くなり、骨量が減少し骨粗しょう症になります。これは今、よくマスコミで言われている病気ですが、骨は体の中心でありその骨がもろくなり、また骨密度が減りスカスカになるようですと歩行困難、転んだときに簡単に治りにくい骨折(病的骨折)をひきおこします。
 また、血中のカルシウム値が高くなりすぎると、腎尿細管での再吸収能力が追いつかず、多量のカルシウムが尿中に排泄され、腎・尿路結石ができたり、腎糸球体や尿細管の細胞内に沈着して腎石灰沈着症をおこしたりします。これが進行すると腎不全となり、人工腎臓による血液透析を週3回程度、一生行うことになります。
 そのほか、高カルシウムによる刺激のため、胃・十二指腸潰瘍や膵炎などがおこることもあります 。

原因
 4個の副甲状腺のうち1個が腫大することが多く、ほとんどが良性の腺腫です。原因は特になく、偶然にできると考えられます。まれに4個の副甲状腺全部が腫大してくることもあります。ごくたまに、副甲状腺がんのこともあります。また、時には脳下垂体、膵臓などの他の内分泌腺にも腫瘍が発生する多発性内分泌腫瘍症の症状の一つとして、副甲状腺が腫れてくることもあります。これは遺伝性で、遺伝子検査を行う必要がありますが、良性であり、きちんと治療をすれば心配することは全くありません。このように一口で「副甲状腺機能亢進症」といいますが、非常に学問的にも、診療上の取り扱いでも難しい病態があります。それはこの副甲状腺機能亢進症の特徴でもあります。

症状
 血中のカルシウム値が高くなるため、尿中のカルシウム排泄量が増え、同時に水も一緒に出ていくため多尿となり、脱水になり、のどが渇き、水を多く飲むようになります。糖尿病と同様の口渇・多飲・多尿といった症状がおこってきます。また、疲労感、倦怠感、情緒不安定、抑うつ、筋力低下、食欲不振、吐き気、便秘などに悩まされることもあります。長年、血中のカルシウム値が高く維持されているため、患者様は感じられないかもしれませんが、精神的に暗くなり、食欲も減少していることが多くあります。それがひどくなると集中力の低下、抑うつ状態、意識障害なども現れてきます。
 骨については骨粗鬆症(線維性骨炎)が進行し、骨がもろくなり、ちょっとしたことで骨折したり、骨の関節の変形、骨痛などがおき、歩行困難となります。
 腎・尿管結石ができると、激しい腰痛や血尿などがおこります。原因が取り除けないと、泌尿器科でいくら結石の治療をしても再発してきます。最終的には、腎機能障害になり血液透析へと向かってしまいます。胃・十二指腸潰瘍や膵炎が発生すると、上腹部痛、吐き気などのいろいろな症状がおこります。 
 骨粗しょう症や腎・尿管結石は早期発見でなければほとんどにおきますが、胃・十二指腸潰瘍症状は20%程度の患者様にしかおきません


その1

その3