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治療と予後 その1:

 良性腫瘍の患者様には普通、甲状腺ホルモン剤(チラージンS)を1-2錠内服していただきます。内服し、3-6カ月しますと腫瘍が小さくなり、消失することがあります。しかし、その効果はあまり大きくなく、特に腫瘍が大きいときには小さくするのは難しいです。腫瘍が大きくなるのを抑えるのが精一杯のこともあります。しかし、そのような場合でも、良性腫瘍では症状もないためそのまま経過を観察し、1−2年に1回ほど超音波検査や穿刺吸引細胞診を行い、良性腫瘍のままであることを確認します。
 甲状腺腫が嚢腫であるときには、経皮的エタノール注入療法(PEIT)を行うこともあります。これは静脈注射に用いる細い注射針を腫瘍に刺して、エタノールを注入し腫瘍を壊死に陥らせるものです。効果があるときには、月に1回の注入で2-3ヶ月で腫瘍は消失します。エタノール注入時に痛みを伴うことがありますが、一過性です。ごくまれに、エタノールの濾出により嗄声(反回神経麻痺)を生じることがあります。

 しかし,次のような方は手術を受けることを推奨いたします。
1) 腫瘍が大きい場合
2) 悪性の可能性が否定できない場合(濾胞性腫瘍で径3cm以上,穿刺吸引細胞診でクラス3以上,腫瘤の増大傾向、など)
3) 機能性結節
4) 美容上の問題など

 手術は通常、2−6日の入院となりますが、ご希望によっては1日入院も可能です。ご家族の付き添いは不要です。全身麻酔で行い、手術の翌日からは自由に歩行、食事などをしていただき、普段の日常生活と大きな違いはありません。
 手術の方法は甲状腺の腫瘍を含めて甲状腺切除します(甲状腺葉切除または甲状腺亜全摘)。普通に行われている手術は首の傷が数cm程度と大きく,甲状腺周囲の手術野も大きく剥離するため、手術後の痛みや不快な症状も多く,入院期間も長く、退院後も首の皮膚が「ちくちくする」、「さわった感じが分からない」、「物を食べるときに首の皮膚がひきつれる」、などという不愉快な症状を訴える方がかなりおられます。

 

 しかし,私達のグループは、低侵襲性手術である「小切開甲状腺切除術」「内視鏡甲状腺切除術」という画期的な手術方法を開発し,多くの患者様から良い評判をえております。また、国内・国外の専門家からも高い評価をえています。
  この手術は、手術後の痛みや傷の瘢痕などを我慢して耐えるものではなく、患者様ご自身が手術の結果に十分満足でき、「質の高い生活」をすることができます。ですから、手術後長く入院していなくてはならない、首に長く包帯を巻いて寝ていなくてはならない、切ったところがひどく痛い、傷が大きく退院しても切開創の瘢痕が気になる、退院しても首にいやな症状が残る、などということは可能な限り少なくなります。
 しかし、腫瘍が大きい場合や悪性(がん)が考えられる場合には、切開創は大きくなりますがそれでも普通のところで行われている手術と比較すれば、明らかに小さな傷口で、前に書いた手術後のいろいろな症状も少ないことは明らかです。

 「小切開甲状腺切除術」は首の約3cmの傷から甲状腺を切除するものです。普通の手術に比べ、傷口の長さが短いばかりでなく、皮下や筋肉などの組織もできるだけ切除しないで、愛護的に(優しく)手術します。大きい腫瘍ですとその大きさに合わせ4cm程度の傷口になることもありますが、手術後の状態は普通の手術に比べ格段に優れています。手術後2-5日目の早期退院が可能です。


(私たちの方法では左鎖骨のすぐ上に
2cmの傷が残るだけです)

治療と予後 その2: 「内視鏡手術」