インターネットの問題点と将来

 インターネットは急激に普及しつつあります.この新しい情報を海を航海するのにどのような問題点があり、どう利用して行かなければならないのでしょう.


  ネットワークとしてのインターネットは急速に膨張しつつありますが、本来教育研究機関の間で非営利目的に開発されてきた技術であるがために、多くの問題も抱えています.この数年急速に利用者が増加したためインフラストラクチャーの整備が間に合わず通信速度が低下してきているのも一つの大きな問題点でありましょう.また、インターネットを利用したビジネスが増加しつつあるにも関わらず、セキュリティーの問題はまだ万全とは言えないでしょう.したがって、重要な個人情報(Passworkやクレジットカードの番号など)の発信については安全とは言い難いのが現状です(もっとも、電話やFAXとて安全ではないのですが).
 利用者側としてもっと深刻な問題は、情報処理教育の欠如でしょう.医学に関わらず、知識の獲得に「本」以外の情報源の占める割合が急速に増えてきています.現在の医学教育では、最先端の分子生物学は教育しても、自分の必要としている情報を如何に効率よく手に入れるかの技術についてはほとんど教育されていません.インターネットはまさに情報の海です.この海で溺れないためには、魚の名前を覚える以上に航海術を覚えなければなりません.しかも、航海術だけ知っていても大洋は渡れないのです.航路はそれぞれの分野によって異なるからです.目的とする航路を知り、更に航海術を心得た指導者が少ないことが最大の問題でしょう.コンピューターさえ買えば、ソフトウェアをコピーして来れば何でもできるはずだと考えているようでは21世紀の救急医療の指導者とはなれないのではないでしょうか.
 インターネットの情報はこれから加速度的に増加するでしょう.インターネットでは、利用者は同時に提供者でもあります.救急医学の領域において有益な情報が何であるのか、どのような形で提供すれべきであるのかを考え、世界共有の有益な財産が蓄積されて行くことを切望してやみません.


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帝京大学救命救急センター
Trauma and Critical Care Center,
Teikyo University, School of Medicine

鈴木 宏昌 (dangan@ppp.bekkoame.or.jp)
Hiromasa Suzuki, MD


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