網    膜

retina

網膜 retina は眼球壁の最内層にあって光を受容し,視覚処理の初めの段階を受け持つ薄い神経膜である.我々の網膜に届いた光は,視細胞に到達するまでに毛細血管や数層の神経細胞層(双極細胞・神経節細胞など)を通る.視細胞層の後ろには色素細胞層があり,散乱した光を吸収して,網膜への乱反射を防止している.

図07

網 膜

 臨床的な網膜は視神経乳頭部 optic disk から鋸状縁 ora serrata までの,光受容部(網膜視部 pars optica )を指す.すなわち,脈絡膜に対応する範囲である.鋸状縁で毛様体上皮に移行する.

 網膜は発生上,内外の重構造になっている.

 これらは胎生早期に脳胞から突出た眼胞 optic vesicle を原基として発生する.眼胞は中央がくぼみ,重構造の眼杯 optic cup になることで,内外の層のあいだが潜在的な空間となる.網膜下腔 subretinal space である(よって網膜下とは 脈絡膜を意味するものではない).
組織学的には,眼杯 網膜 網膜視部 + 網膜盲部(網膜虹彩部+網膜毛様体部),ということで,網膜の重構造は毛様体・虹彩の層の色素上皮( 網膜盲部 pars ceca )に連続している.

発生は【第十三章

 感覚網膜は眼球内面の 65 ~ 72%ほどをカバーするとのことである.直径 22 mm の球として単純計算すると,網膜面積は 988mm²〜1095mm² ほどとなる(内面の凡そ で 10cm².ちなみにこの条件では容積は 5.6mLほど). 網膜の厚みは,視神経乳頭周りで 500  600 µm ,黄斑周囲で 250  300 µm ,中心小窩で 150  200 µm ,鋸状縁で 100 µm ほどである.

図01

網膜の10層構造

@内境界膜 inner limiting membrane

 内境界膜 internal limiting membrane は,Müller細胞 そのたの網膜グリア細胞の突起(基底膜,または end-feet )に,硝子体線維・ムコ多糖をまじえて形成される.硝子体に接する側はコラーゲン線維(W型)が付着し,硝子体コラーゲンの足場になっている.

 後極部で厚く,約 1.5 ~ 2.5 µm .中心窩や周辺では薄い( 約 0.05 µm ).

A神経線維層 nerve fiber layer

 視神経線維層 optic nerve fiber layer は,神経節細胞の軸索突起の集合である.網膜の神経線維は 100(〜140)万本ほどで視神経乳頭に集まる.眼内では無髄軸索であるが,乳頭部で篩板を抜けた眼外では有髄となり,主に外側膝状体へ達してニューロンを替える.

 これにより視神経とはこの軸索のことである.網膜の主要血管を含む層でもある.

B神経節細胞層 ganglion cell layer

 神経節細胞層 は,網膜神経節細胞(第ニューロン;2 nd neuron )の核(細胞体)の部分である.

C内網状層 inner plexiform layer

 内網状層 は,神経節細胞が双極細胞や amacrine細胞とシナプスを作る部分である.

D内顆粒層 inner nuclear layer

 内顆粒層 は,amacrine細胞・双極細胞(第ニューロン;1 st neuron )・水平細胞・Müller細胞 等の核の部分である.

E外網状層 outer plexiform layer

 外網状層 は,視細胞と双極細胞や水平細胞とのシナプスの部分である.外側 は視細胞体から伸びる軸索,内側 はシナプスないし樹状突起.

F外顆粒層 outer nuclear layer

 外顆粒層 は,視細胞の核の部分である(核を含む細胞体とその突起).黄斑ではわずかながら Müller細胞の核が紛れ込んでいる.

G外境界膜 outer limiting membrane

 外境界膜 external limiting membrane は, Müller細胞の端で,視細胞同士を固定する細胞間連結装置 junctional complex または,終末堤 terminal bar .穴あき網目シートで穴に視細胞をはさんでいるイメージ.

H視細胞層 photoreceptors layer

 視細胞層 は,光感覚細胞(受容体細胞)の細胞体(内節の部と外節)の部分である.視細胞には杆体 rod と錐体 cone がある.

図02 図03

I網膜色素上皮層 retinal pigment epithelial layer

 層の色素上皮細胞は Bruch膜を介して脈絡毛細血管板につながり,機能的には脈絡膜に属する.その機能は,

  1. 血液眼関門を形成・・細胞同士の tight junction による

  2. 神経網膜を接着・・網膜下腔のムコ多糖類の合成,ポンプ作用

  3. 網膜外層の栄養・・栄養および代謝産物の輸送

  4. ビタミンAの代謝・・ビタミンAの貯蔵とロドプシンの合成

  5. 視細胞外節の貪食・・消化・リサイクル

  6. メラニン顆粒による暗箱機能・・散乱光吸収

  7. 胎生期の視細胞形成に必要

  8. 網膜下腔の形成

  9. などなど

 細胞数350  500万個,細胞密度は周辺へいくほど下がるが,色素量は黄斑領域が最も多い.1個の色素上皮細胞に対し中心窩では30個の錐体視細胞を,20°付近で28個,周辺で22個の杆体視細胞を乗せる,とのことである.

図04 図05

組 織

図06

模式図視細胞の詳細

血管系

 眼球へ入る血管は,眼動脈 ophthalmic artery から分かれた網膜中心動脈 central retinal artery と毛様(体)動脈系 ciliary arteries である.網膜への栄養は,網膜に直接分布する網膜中心動脈の枝と,毛様動脈が接続する脈絡膜による.網膜中心動脈系の守備範囲は外網状層よりも内側,すなわち第ニューロン以降の脳層である.脈絡膜の守備範囲は外網状層より外側,すなわち神経上皮層(視細胞,網膜色素上皮細胞)の範囲である.

眼 底

 構造というと断面が要求されることが多いが,平面つまり瞳孔を通して眼球内部を見たものが眼底である.網膜とその血管,脈絡膜,視神経乳頭が眼底所見の主要な構成要素である.

眼底内の部位
 眼底は平面を主体にした概念であるから,部位によって機能が違い,発症疾患の差となる.

視神経乳頭 optic disc 視細胞(というか網膜構造そのもの)を欠くため視野の中では盲点 blind spot となる
中心窩  fovea いくつかの層が外側へ押しやられている → 光の透過性増加・結像の歪み減少
毛細血管が無い,錐体外節が異常に長い,小さい受容野 → 高い解像度
後極部 posterior pole 乳頭・黄斑部・血管アーケード帯を指す
赤道部 equator zone 中間周辺部・渦静脈の深さ
周辺部 periphery 網膜は鋸状縁で終わる

疾患臨床で「眼底所見は?」と言うと,地形図のような定の広がり(範囲あるいは位置)や隆起のほかに,地質図のような深さ,脈絡膜の外側つまり強膜さらに眼外の病変を言外に含むことが多い.同時に硝子体側の情報も必須である.

(詳細は,@【第五章】眼底,A【第三章】脈絡膜,B【第十一章】血管,で)

視細胞で感知された光情報は,網膜内の神経系で変調され,視神経では神経インパルスの形で中枢に伝えられる.
網膜内での基本的な情報の流れは,視細胞 ⇒ 双極細胞 ⇒ 神経節細胞 である.
(光受容細胞)(第ニューロン)(第ニューロン)

  1. 網膜の神経細胞群

    視細胞 photoreceptor cell 杆体 rod と錐体 cone .核は外顆粒層を形成.
    水平細胞 horizontal cell 内顆粒層の視細胞寄りに存在.
    双極細胞 bipolar cell 内顆粒層を形成する主要素.
    amacrine細胞(無軸索細胞)内顆粒層の神経節細胞寄りに存在.
    網状層間細胞内外の網状層を連結する細胞.
    神経節細胞(視神経細胞)
      ganglion cell
    多極神経細胞.軸索は視神経となる.
    グリア細胞(神経膠細胞) 応 グリア細胞は神経細胞には含めなくてよい)
    Müller細胞 網膜の主要グリア.核はおもに内顆粒層に存在.網膜の支柱的役割と神経細胞保護作用.
    そのたのグリア  ・星状膠細胞(astroglia,astrocyte):網膜血管周囲・乳頭表面に存在するグリア.関門機能.
     ・小膠細胞(microglia):内網状層に存在.貪食と組織修復.
     ・希突起膠細胞(oligodendroglia,oligodendrocyte):視神経に存在.
  2. 視細胞の特性

図08
  1. 視細胞

    視細胞は,外節 outer segment ,結合部 connecting piece(線毛 cilium ),内節 inner segment ,シナプス結節( synaptic pedicle ),から成る.外節は円板膜が重なってできている部分で,視色素を擁し刻々代謝されている.内節・細胞体の硝子体側でゴルジ体や小胞体を多く含む部分をミオイド myoid,色素上皮側でミトコンドリアを多く含む部分をエリプソイド ellipsoid(楕円体),という(右図 M および E :この部分をもって内節とするテキストもある.).細胞体の先でシナプスまでが軸索に相当する.
    杆体は暗所視・運動覚・光覚にかかわり,錐体は明所視・形態覚・色覚にかかわる.軸索の長さは錐体・杆体では差がなく,場所により差があるとのことで最長 500 µm .軸索の太さは場所の差はなく,錐体は 1.6 µm であるのに対し杆体は 0.4 µm

    @錐体 cone 500万個(350〜700万個).径は 2(特に中心小窩) ~ 6 µm で長さは 75 µm .感度が低く(閾値が高く)暗所では機能しない.基本的に黄斑に分布し,数個の錐体が1個の双極細胞に収束するため高解像度で,特に中心窩では1対1対1対応による最高分解能を得る.これにより明所視・色覚と図形の形状識別(または認識視力)をしている.

    外節(形質膜の折畳みからなる円板膜‐錐体では露出)が短く,ラメラ膜という.外節の脱落は明所視暗所視に変化した直後に増加するとのことである.

    ・細胞数は??
    錐体数は中心小窩(径500 µm の領域)で200,000個/mm²(10〜30万個/mm²と,個体差というか研究者の報告によって幅がある.錐体サイズを 2 〜 2.5 µm とすると 1 mm²の中に25 〜 20万個となる). 中心から 500 µm 離れると ½ ,10 °(3 mm )離れると ¼,4 mm 離れると 1/10 以下になるとのこと(当然,杆体と混在).
    中心小窩では面積約 0.2 mm² となり,40,000個,中心窩では(範囲を径 1500 µm,100,000個/mm² として)中心小窩を差し引いた面積約 1.57 mm² 内に 157,000個,ということで径 1.5 mm( 5 °)内には凡そ20万個の錐体が存在することになる.

    ・神経節細胞1個の受容野は1個の錐体で決定され隣接受容野との距離は錐体視細胞同士(中心-中心)の距離に相当する.視角 1′ は網膜ではおよそ 5µm計算の根拠)で,錐体2個が入ることになる.要するに,2視細胞(中心)間の距離は 2.5µmとすると,視角 0.5′ すなわち視力 2.0 が限界となる.
    表現を変えれば,空間周波数(サインカーブ)の山と谷1cycleぶんに2個の錐体 5µm は視角 0.5′ ,すなわち空間周波数 60cycles/degreeが2点分離の最大値となる.

    A杆体 rod 1億個(7500万〜1.25億個).径 2 µm ほど,長さは 120 µm ほどである.基本的に周辺に分布し、暗所視・動覚にかかわる.多数の杆体が1個の双極細胞に収束し感度を上げているが,解像度は期待できない.
    中心小窩には存在しない.無杆体部分は径 1.25 °375 µm ほど.報告者により 250〜750 µm と差があるがおおよそ 300 µm くらい.20 °付近で最も高密度(160,000個/mm²)である.受容野は部位によって違い杆体視力のピークは 5 °付近である.

    外節( rhodopsin分子を豊富に含む円板が自由に浮遊)が長く,ディスク膜という.外節の脱落は暗所視明所視に変化した直後に増加するとのことである.

    ・杆体は,錐体の1000倍以上の感度がある(閾値が低い).明所では動作を停止する(飽和する,という).

    ・眼軸が伸びると(23mm27mm)後極部の視細胞密度は80%になる.

  2. 視物質(感光色素)

    外節内部には形質膜が折り重なってできたディスクが詰まっており,光量子はこのディスク上で受容する(ディスクに視物質がある).ディスクは日々10%ほど入れ替わっている.視物質(視色素)は,vitamin A 誘導体(レチノール)のアルデヒドであるレチナール retinal を発色団として,オプシン opsin タンパクとの複合体になっている.色素に光が当たると(色素が光を吸収すると) retinal のall-trans型への異性化で脱色 bleaching し,opsin と解離する.そのごの連の反応で膜電位が変動する受容器電位を生じる.言い換えると視色素の分解が光感覚のトリガー反応,ということである.
    レチナールは視色素に共通で単体での吸収域は紫外にあり,オプシンによって吸収波長を変えているとのこと.

    @錐体は,波長感受(分光感度)特性の違う種類(青・緑・赤)の視物質( iodopsin ヨドプシン.または photopsin )にて光吸収を行なう.
    iodopsin の retinal は rhodopsin と共通で,光受容の仕組みは基本的に杆体と同じと考えられているが,結合している opsin はアミノ酸配列の違いから三種類の錐体がある(青色素;cyanolabe ,緑色素;chlorolabe ,赤色素;erythrolabe ).

    短波長感受性錐体(S 錐体,青錐体)最大吸収波長 420 〜445 nm (blue ;short wave )
    中波長感受性錐体(M 錐体,緑錐体)最大吸収波長 530 〜545 nm (green ;middle wave )
    長波長感受性錐体(L 錐体,赤錐体)最大吸収波長 557 〜570 nm (red ;long wave )

     *種類のL 錐体最大吸収波長 556.7 nm のヒトが62%,552.4 nm のヒトが38%

    L 錐体は64%ほど,M 錐体は32%ほどの割合とのことである.ほぼ同数と記述のあるテキストもあるが,遺伝子上の変異を生じやすく比率はバラつくのが実際らしい.分布はディスプレイ画面のような規則性・平均性はなく,結構ランダムにかたまり(群)を作ってちらばってる,とのことで,色のコントラストによる空間分解能は低い(この生理特性を利用したのが NTSCカラー伝送?).

    S 錐体は全体の 2(数)%ほど.中心小窩内の径100 µm 部分は S 錐体が無い.以前より,非常に小さい対象に対して青色盲を示すことが心理物理的に確認されている.また青色に対する最高感度は中心から 1°離れた部位である.またS 錐体は周辺までほどほどの割合で分布している(とのことで青指標の色視野が広いことの説明になる,かもしれない?).なお,短波長光は散乱しやすいため錐体軸索の黄色色素でカットし同時にS 錐体もなくしてしまったのは,色収差を抑制し視力を確保するために合目的なのだとか.

     *波長特性は,実験方法により微妙に変わる.生体眼では角膜表面上での波長特性を示し,水晶体・硝子体や黄斑色素の影響を受ける.視細胞表面での波長特性の報告では,紫外領域にも感受性があることで短波長方向へシフトした特性となっている.

    色覚の発生はこちら

     $ blue coneblue amplifier

    A杆体は,種類の視物質( rhodopsin ロドプシン)にて光吸収を行なう.最大吸収波長は498 nm 付近である.これは地球上で観察される太陽光線の波長分布のピーク(450〜500 nm)と致する.太陽表面温度の約5800Kに依る,とのことで,表面温度の違う恒星に属する惑星に視覚をもつ生物がいるとすると,可視光線として利用する電磁波の波長は違うと考えられる.なお,自然光の波長成分については,メラノプシン神経節細胞を研究する立場でも重要視されている.
    rhodopsin は,量が多く信号増幅機能があり光閾値が低いが,明順応下では rhodopsin が退色 bleachするため明視野では機能していない.実際には,錐体視の状態でも杆体中の rhodopsin は 1 %しか退色しない.rhodopsin の濃度が10%下がると視感度は1/100になるという.

    図09分光感度 図10視感度

    順応とは視物質の分解・再生のプロセスである.

  3. Purkinje 現象

    プルキンエ効果Purkinje effect
    明所視では黄緑色( 555 nm )に最大感度があるが,暗所視では青緑色( 507 nm )で最も感度がよい.要するに錐体視では黄色付近が明るく感じ,杆体視では緑色付近が最も明るく感じるということ.
    目が順応できる程度にゆっくりと照明を暗くしていった時,赤やオレンジ色などの長波長に対する感度は紫や青の短波長の感度よりも早く減衰していくことになる.この視感度の移動を Purkinje現象という.
    それぞれを560 nm ,510 nm とする教科書もある.

    視感度についてはこちら

    $ Purkinje はドイツ語表記であり,元はチェコ語でPurkyně と綴り,「プルキニェ」とするのが原語発音に最も近いのだそう.
       初期の日眼用語もそんな風に書かれていたような なかったような.フルネームはJan Evangelista Purkyně.

  4. 順 応

    暗順応とは,暗い環境で光覚閾値が次第に低下することである.明るい場所から暗闇に急に入ると,始めは何もみえないが時間がたつと次第に見えてくる.この30分から 1 時間の過程は次のように考えられる.
    光照射下では rhodopsin の再生と分解は平衡状態あるいは消費状態にある.この状態で暗闇になると分解過程が抑えられる.再生過程はそのままであるから視細胞内の rhodopsin の量が増加する.そのため,感度が良くなる(閾値が低下する).
    暗順応時の時間経過による光覚閾値の低下を示した曲線が暗順応曲線( dark adaptation curve )である.暗順応曲線は網膜の部位で異なる.中心窩では,明から暗に移って 2 ~ 3 分以内に急速に閾値が低下し,5 ~ 10分で定値に達する.網膜周辺部では,閾値の低下は比較的ゆっくりと生じる(30〜60分).従って,暗順応曲線は相に分かれた曲線となる.第相は錐体,第相は杆体が関与した過程とみられる.

      暗順応  視物質の再生 → 視感度の上昇

    明順応とは,明るい環境で光覚閾値が上がりまぶしさを感じ難くすることである.光への反応性が低下するこの過程は,数分で急速に完了する.

      明順応  視物質の減少 → 視感度の低下
           錐体視物質よりも杆体視物質が容易に退色 bleach する
  1. 神経細胞の応答

    網膜での主要な視覚情報の流れは視細胞  双極細胞  神経節細胞である.
    光刺激は視細胞に受容器電位を発生させる.この電気信号は明るさの強度を情報としている.双極細胞への伝達情報の際は,水平細胞が色や明暗のコントラスト調整に関わる.双極細胞から神経節細胞への伝達情報では,amacrine細胞が再度コントラスト調整を掛ける(介在ニューロン).神経節細胞では活動電位が生じ,その軸索にそって上位の中枢(外側膝状体大脳)に情報が送られる.この軸索の束が視神経である.神経節細胞の軸索は主に外側膝状体へ届き,シナプスを形成している.

    <網膜回路網>
              → → → → → → → → → 神経節細胞(G) → 大脳(主経路)
             ↑
    視細胞(R) → 双極細胞(B) → amacrine 細胞(A) → 神経節細胞(G) → 大脳(間接的経路)
             ↑         ↑↓
    視細胞(R) → 水平細胞(H) → amacrine 細胞(A) → 神経節細胞(G) 
             ↑         ↑↓               → 大脳
          (網状層間細胞(I))・ amacrine 細胞(A) → 神経節細胞(G)

    ・ 縦の信号回路=視細胞  双極細胞  神経節細胞  視神経
    ・ 横の信号回路=水平細胞 amacrine細胞(いずれも抑制性)
    ・ 逆行性の信号回路網状層間細胞 interplexform cellsは内網状層で双極細胞や amacrine細胞から入力を受け,外網状層において水平細胞にあるいは時に双極細胞に出力する.

  1. 視細胞

    視物質(視色素)の光量子吸収による opsin と retinal との解離,を光覚の出発点と見做すことができる.視細胞内では視物質に光が当たると連の生体化学反応 phototransduction cascade が起こり,光覚情報を電気情報に変換・増幅する.電気情報の本体は膜電位の過分極応答である.視細胞電位を生じる,という表現も用いられる.

    暗所では,視細胞は脱分極状態にある.網膜に光が来ない状態ではグルタミン酸が常に放出されており,抑制性シナプス後電位( IPSP:inhibitory postsynaptic potential )を起こし,視神経へのシグナルは抑制されている.
    明所で光エネルギー粒子(フォトン photon)が当たると視物質が分解され,cGMP-gated Nachannel はストップし Naの流入が阻害され,細胞内の電位はますますマイナスになる,すなわち過分極となる.これが視細胞の電位変動である.
    これによってグルタミン酸の放出は止まり,興奮性シナプス後電位( EPSP:excitatory postsynaptic potential )が発生しシグナルが伝達される.

    視細胞 ← 光情報 図11 グルタミン酸放出
      光の照射によって過分極応答(電気情報へ変換)
      伝達物質(グルタミン酸)放出の減少
    内顆粒層の双極細胞と水平細胞へ電気情報が伝達

    暗所では細胞内の Ca2+濃度は高い.Ca2+はS-モジュリン(リカバリン)に作用して視物質のリン酸化酵素(ロドプシンキナーゼ(RK)Ca依存性)活性を阻止する.これにより視物質の分解が進行せず(結果,cGMPの5'-GMPへの転換が進まず),過分極にならない(高感度状態,または入力待ち).
    光の入力(過分極)によって Caチャンネルが閉じるので,明るいほど細胞内の Ca2+濃度は低くなる.それだけcGMPが消費されるので,光への反応性が低下する(感度調節,順応).錐体は増幅度が低く低感度となっている.明所視での杆体は入力オーバー即ち飽和することで,反応性が停止する.

    次の光入力に備えるには,
    ³ 光暴露により,視細胞内の Ca2+濃度が低下する.グアニル酸シクラーゼが活性化する.
     これにより,cGMP が増産される.同時に PDE を抑制する.cGMP の Naチャンネル親和性が高まる.  陽イオンチャンネルが開く.

    ³ 活性化&光退色した視物質のリン酸化アレスチンの結合で不活化(過分極の停止) 分解・脱リン酸化 (網膜色素上皮内では)レチノールの還元 外節へリサイクル・視物質の再合成,
     の過程をとる.

  2. 内顆粒層

    視細胞は双極細胞・水平細胞とシナプス結合をしている.

    水平細胞
    水平細胞は視細胞とシナプスを形成し,GABAを伝達物質とする抑制性ニューロンである.
    GABAは双極細胞や視細胞を過分極して周囲の双極細胞・視細胞に側抑制をかける.すなわち,暗時には視細胞からのグルタミン酸で,脱分極性の応答を起こす.光照射によりグルタミン酸が減ると過分極になる.水平細胞が過分極するとGABAの放出は抑制され,シナプス後ニューロンは脱分極する.このことによって側方抑制をして周辺受容野を形成する.
    水平細胞は複数の視細胞からの入力を受けることと水平細胞同士のジャンクションにより,受容野は大型の円形となっている.暗順応時には入力の加算をして背景ノイズを減らしているらしい.明順応時には横の連絡を切り離して分解能・コントラストを確保する.

    ・外網状層では視覚の空間的情報処理を行う.

    双極細胞
    双極細胞には,on中心型(脱分極応答)と off中心型(過分極応答)とがある(on型が90%以上?同数?).杆体からの入力を受ける杆体双極細胞はon型で信号の増幅を,錐体からの入力を受ける錐体双極細胞はon型とoff型により高解像処理をしている.
    これらにより,空間・時間の変化すなわち光刺激のコントラストや増減を検出する.
        @on型光照射で脱分極する(グルタミン酸が結合すると過分極する・・極性が反転.IPL外側にシナプス.
        Aoff型光照射で過分極する(グルタミン酸が結合すると脱分極する.IPL内側にシナプス.

    双極細胞はamacrine細胞・神経節細胞とシナプス結合をしている.
    脱分極によりグルタミン酸が放出され,極性が同じ応答が神経節細胞amacrine細胞に発生し,情報がリレーされる.

    図12

    ・形状からおおきく3種類ある.@小さな樹状突起の midget双極細胞,A放散した樹状突起の diffuse双極細胞,B青on信号専用双極細胞である.
    midget双極細胞には大小あり,大型は緑経路,小型は赤経路に対応し,midget神経節細胞に接続する.緑信号を多く加算することで黄斑色素によるシフトを補正し,高解像力に関与.青信号に関してはoff型双極細胞が存在.
    diffuse双極細胞にはLM錐体が収束しparasol神経節細胞に接続する.濃淡コントラストに関与.
    青のon信号専用の双極細胞は2層型(bistratified)神経節細胞に伝達.ここには赤・緑の和信号がoff型diffuse双極細胞から入力し,青on-黄offの色対立信号となる.

    amacrine細胞
    amacrine細胞は双極細胞や神経節細胞とシナプスを形成している抑制性ニューロンで,GABAやグリシンなど(数種類の伝達物質放出)の抑制性伝達物質により側方抑制を行っている.光照射により持続性の応答を示すものと,光照射の初めと終わりに過性の脱分極を起こす細胞とがある.無軸索細胞ということで樹状突起は入出力を兼ねていることになる.
    広く軸索を延ばしている多軸索細胞がある.時間軸の中で視野の中の変化を検出しているらしい(ぶれの補正,SN比の確保,・・).

    ・内網状層では視覚の時間的情報処理を行う.

  3. 神経節細胞

    神経節細胞は網膜の出力細胞で,唯活動電位 action potential を発するニューロンである.

    網膜神経節細胞は,真っ暗闇でもたえず放電している.これを自発放電という.自発放電のスパイクは光の照射で増減する.
    網膜神経節細胞の受容野は,中心野と周辺野がある.

    .受容野は,中心部を照射するときと周辺部を照射する時の反応は拮抗的である.
    この反応の違いから種類に分類できる.

     @on型受容野中心−on,周辺−off 型ニューロン( on-centeroff-surround type ).
    光照射に対して,中心が興奮性に周辺が抑制性に応答すること.中央部を照射するときパルス発射頻度が増加(発火)し,周辺部を照射すると刺激中は抑制され,off直後に発火する.明るい背景にある暗い点に強く反応する.
     Aoff型受容野中心−off,周辺−on 型ニューロン( off-center,on-sorround type ).
    中心が抑制性に周辺が興奮性に応答すること.上と逆の反応を示す.光減弱で発射頻度が増加,暗い背景の中で光る点に強く反応する.

    図13

    受容野内では,中心の周辺に対する明るさ(on部分)と暗さ(off部分)のコントラストを伝える信号,あるいは対象とする物体の明るさよりもその輪郭を特徴として抽出するような性質をもつ,といえる.

    .XYW系
    神経節細胞は機能的・形態学的に独立したいくつかのグループに分けられ,視覚情報の特性(modality)を抽出し複数のチャンネルで信号を出している(並列処理 parallel processing という).これにより10種類以上が区別されているが,代表は小さいX型(midget細胞)と大きいY型(parasol細胞)である(いずれも単層型 mono-stratified).

     ・midget神経節細胞(X型細胞または β細胞)は軸索が細く伝導速度は遅,光照射に対し定した持続性応答・線形加重を示す.
       網膜中心部に多く,受容野は小さく色光に応答する.コントラスト感度の高周波部を受け持つ.80%.
       視覚対象の中心窩視による高解像度の像や色覚情報(形態覚 form vision )を担うことで,空間周波数感度にすぐれる.
       支配線維はほとんどが外側膝状体 parvo cell群へ投射し,部が視蓋前域に投射.

     ・parasol神経節細胞(Y型細胞または α細胞)は軸索が太く伝導速度が速,輝度変化に対し過性すなわち敏感に応答する.
       網膜全体に分布し,受容野は広い.コントラスト感度の低周波部を受け持つ.10%.
       視覚対象の位置・奥行きや動きの情報(動態覚 motion vision )を担うことで,時間分解能にすぐれる.
       支配線維は外側膝状体 magno cell群と上丘(外側膝状体外視覚系として視床枕を経由し18野へ投射)に接続.

     ・small bistratified(2層型)神経節細胞(W型細胞または γ細胞)は中等度の太さの軸索と中等度の伝導速度を持つ神経節細胞である.
       色覚の部( blue-yellow pathway )と視覚認知以外の眼球運動,瞳孔反射などの視覚性反射に必要な情報を伝える.
       外側膝状体 konio cell群に投射する.視蓋前域核に入る情報は瞳孔運動に,上丘に入る情報は衝動性眼球運動に関与.

     ・メラノプシン神経節細胞
       大きな樹状突起を多く持つ神経節細胞で,0.2%ほど? 青色光(ピーク470 nm )を感受し 視交叉上核 へ接続.
      部は視蓋前域オリーブ核へ入力し瞳孔反応に関与する.視細胞の光受容とは無関係に脱分極を起こす.

     ・その他,外側膝状体内の接続先はもとより膝状体外の行き先が決定されていない数種類があるとのことである.

    図14

    c.

    Y・X・W(Y:X:W=1:8:1)はネコ網膜にて生理学的に研究された命名で,軸索伝導速度や受容野,反応特性などから分類された.組織学(形態学)的研究では αβγ と名づけられている.完全にではないが,霊長類(P;primate)とくにサルでの細胞形態にもおおよそが致するとのことで,parasol細胞をPα ,midget細胞をPβ ということも多いが.そもそも敢えて区別せずに記述される教科書が多いようである.

    (  続きは【第九章】LGBへ)

すなわち 基本的な反応は

  1. 光が光受容器に到達すると視色素が分解される.光化学反応である.これにより視細胞は過分極の状態になり,伝達物質の放出量が減少する(ここまでで光情報化学情報電気情報と変換された).

  2. 通常,伝達物質は双極細胞を過分極の状態にするため,放出量の減少によって双極細胞は脱分極の状態になる(ここで視細胞双極細胞に情報が伝達された).

  3. 双極細胞は脱分極によって伝達物質を放出し,神経節細胞を興奮させる(活動電位発生 ...ここで視神経に視覚情報が乗ったことになる).

このようにしてインパルスとなった情報は神経節細胞から発信され,視神経により
主として視床下部の外側膝状体に,部は上丘等に伝えられる(   【第九章】視路へ).

図15 視路 図15 視路

ページのトップへ

●細胞膜電位(分極)とNa-Kポンプ
細胞の環境は内液の K,外液の NaCa2+Clの濃度勾配がある.Na-Kポンプとよばれる能動輸送系により,外に Na,内に Kのイオン勾配が維持されている.すなわち,Na濃度は内<外,K濃度は内>外,となっている.静止時には細胞膜のイオンチャネルの K透過性により Kが外に流出し,細胞膜をはさんで外部に対して細胞内がマイナス負になっている.これが膜電位である(負の分極が生じている,という).静止膜電位は,(細胞外をゼロ電位として)通常−70mV ~ −60mVに保たれている.
例えば,般に神経細胞の活動では細胞膜電位は過性にプラス側に振れる.スパイクである.よーするにインパルスという活動電位で情報が伝達される.ただし,光受容時の視細胞の反応は電位変動による.

図16 暗電流

●脱分極( depolarization )膜電位が上がること.膜電位を上げるのに影響するイオンは NaCa2+.活動時に,Naが細胞内に流入することによる.
視細胞内節では細胞内から細胞外へNaを吐き出している(Na-Kポンプ).平行して細胞外Kが流入するが同時に選択的Kチャンネルにより細胞内Kが流出しバランスが保たれている.他方,外節では陽イオンチャンネル( cation channel ; cGMP依存性Na channel ; Naチャンネル )が開いた状態で,形質膜を介して細胞内に陽イオン(主として Na,と Ca2+)が流入している(dark current暗電流).これにより外節の膜電位はおよそ−40 ~ −30mVであり,暗順応時は脱分極状態にある,と説明される.cGMP濃度によりNaチャンネルが開閉することで,cGMP依存性という.

●過分極( hyperpolarization )膜電位が下がること.膜電位を下げるのに影響するイオンは般に KCl

視細胞では光エネルギー粒子(フォトン photon)が rhodopsin を分解し 11-cis型retinal を all-trans型retinal に変換すると,オプシンが活性化する.
 → 中間産物メタロドプシン が トランスデューシン( tansducin:興奮性のG蛋白)を活性化する.
 → tansducin は フォスフォジエステラーゼ( phosphodiestelase:PDE )を活性化する.
 → PDE は cyclic guanosine monophosphate(c-GMP:環状グアノシンリン酸)を guanosine monophosphate(5'-GMP:グアノシンリン酸)へ変換,不活性化する.
 → cGMP濃度がさがることでNachannel が閉鎖(流入停止と,Na-Kポンプによる細胞内 Naの流出が続き細胞内の電位はさらにマイナスになる)
 → 膜電位が下がる,すなわち過分極化(ERGa波の発生).

このとき視細胞へは Kが取り込まれ続け,細胞外 Kは減少する.方で内顆粒層での細胞外Kは増加する.amacrine細胞と神経節細胞,双極細胞の脱分極によるものである.この反応は強く長時間つづき,この増加分の Kは Müller細胞に取り込まれる.

図17 ミュラー

Müller細胞
細胞体は内網状層,核は内顆粒層,突起は,網膜内面で内境界膜を視細胞部では外境界膜を形成する.さらに多数の細突起を視細胞間へ伸ばしている.これにより網膜を構造的・機能的に支える(右図 印).
網膜血管に対しては,血液関門の役をになう.普段はGDNF(glial-cell-line-derived neurotrophic factor)を産生して血管透過性を下げているが,糖尿病ではVEGFを産生して透過性亢進を来たす.増殖して,損傷を受けた網膜欠損部や閉塞血管内腔の穴埋めをする.網膜外(特に硝子体中)に移動・増殖して増殖膜の成分にもなる. 最近の研究では神経細胞に再分化する潜在機能が証明され,網膜再生への手がかりが期待されている.

グリア細胞の細胞膜透過性はおもに Kであり,静止膜電位は細胞外液の K濃度に依存する.細胞外のK濃度が上昇すると細胞内に流入し,内境界膜から硝子体中へ吐き出す.この移動によりERGb波が生じる.

●グルタミン酸glutamic acid
視細胞は脱分極中にグルタミン酸を放出している.
on型はmGluR6という受容体を持っており,グルタミン酸がmGluR6に結合すると,フォスフォジエステラーゼ活性化によりc-GMP分解を促進しc-GMP依存性Na channelを閉鎖して過分極を生じる.よって光刺激でグルタミン酸放出が減少すると脱分極する.方off型はGluRを持っており,グルタミン酸がチャネル内在型GluRに結合すると脱分極する.そのため光刺激によって過分極する.

GABAガンマアミノ酪酸(γ-aminobutyric acid)
中枢神経でのシナプスの伝達物質の1つ,主要な抑制性伝達物質.グルタミン酸が脱炭酸化されて生じるアミノ酸.

●レチナールretinal
レチナールは視色素であるロドプシン構成成分のつ.レチナールは体内で脂質であるレチノール(vit A)から産生される.

●オプシンopsin
G蛋白共役受容体(GPCR:G protein coupled receptor )の種のポリペプタイド(lipoprotein. 

●Gタンパク(G protein あるいは GTP‐結合蛋白質(GTP‐binding protein
グアノシン三リン酸( GTP:guanosine triphosphate )と結合して活性化される蛋白質で,細胞の情報伝達の鍵を握る.
GTP結合蛋白質は,細胞膜の受容体と相互作用して細胞の外から内へシグナルを伝達する三量体GTP結合蛋白質(狭義のGタンパク質)と,細胞内で上流から下流へのシグナル伝達に介在する低分子量GTP結合蛋白質に大別される.

●グアニン
☆プリン塩基プリン核を持つ塩基で,アデニン adenine ,グアニン guanine が代表.
核酸の構成成分である五炭糖・塩基の化合物でリン酸が結合しているものがヌクレオチド nucleotide .

アデニンを含むヌクレオチド・・・アデノシンリン酸 AMP:adenosine monophosphate
アデノシンリン酸 ADP:adenosine diphosphate
アデノシン三リン酸 ATP:adenosine triphosphate
など
グアニンを含むヌクレオチド・・・グアノシンリン酸 GMP:guanosine monophosphate
グアノシンリン酸 GDP:guanosine diphosphate
グアノシン三リン酸 GTP:guanosine triphosphate
など

 *リン酸=モノフォスフェート ・・・

◎リン酸化
生命反応の最も基本的な部分のひとつ.  こちらでも
視物質はリン酸化により不活化されリサイクル(すなわち暗順応)の過程をとるが,網膜色素変性ではこの辺のプロセスに支障がある.言ってみれば,常に光入力がある状態,ということになる.

●側抑制・・変化の検出
与えられた光刺激は,光を受けた神経節細胞を興奮させると同時に隣接した細胞を抑制するようになっている.信号の始まる時にだけあるいは終わる時にだけといった,信号が時間的に変化した時に強く反応するのは、時間軸上の側抑制の機能となる.側抑制によって,明暗あるいは色彩が変化する境界で反応が現われる.色については灰色から赤(緑),青(黄)に変化することを検出する.

側抑制によると,様な明るさの部分では神経節細胞はほとんど反応しないことになる.つまり本当に暗い所でも,非常に明るいところでも、そこが様に明るいとやはり細胞はほとんど反応しない.明暗判断は見ている部分の明るさではなく,視野全体での相対的な明暗の変化で行う.
反応が現われる所は明暗あるいは色彩が変化する境界で,変化分だけ検出して伝送し,後で元の情報を復元している.

図18

固視微動
細胞は変化分にしか応答しない.よって,静止画をじっと見ていると(動きがないと)細胞は何も応答しなくなることになる.実際には眼球運動を随意的に止めることはほぼ無理であるばかりか,生理的に常に細かい動きがある.したがって境界の位置も細かく変化し,常に信号が出ていることになる. 固視微動である. 皮質レベルでの神経細胞反応特性による,とのことである.

●視覚受容野receptive field
あるニューロンを活動させ得る光刺激空間の範囲.個のニューロンが受け持つ網膜上の範囲.般に感覚系の個のニューロンが受け持つ感覚刺激の空間的な範囲を受容野という.
通常,網膜中心はか狭い範囲で,周辺は受け持ち領域が広い.

●輪郭強調あるいは辺縁対比(border contrast)
網膜に写った像をシャープにする効果(エッジ強調)は神経節細胞の受容野の構造(center-surround構造),すなわち相反的(拮抗的)な同心円状の受容野に起因しているものと思われる.

オン中心・オフ周辺型ニューロンは,受容野中心部の視細胞から興奮性の影響を,周辺部から抑制性の影響を受けていると考えられる.

明暗の境でのオン中心・オフ周辺型ニューロンの動きは・・・
a)明るい光があたっている部位の細胞は興奮性入力と共に抑制性入力を受け,中等度の放電をしている.
b)境界近くで明るい所にある細胞は,抑制性の入力が半分しか入らず,⒜の場合に比較して発火頻度が大きい.
c)境近くで暗い部位のニューロンは明るい部分からの抑制入力のみ受け,他の暗い部分に比較して発火頻度が小となる.
従って明暗の境では,明るい所はより明るく,暗い所はより暗いように強調される.

図19 図20

ページのトップへ


2014