網膜の病態

part U 先天異常・血管病変・炎 症

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§ 先天異常  congenital deformities

  1. reference

    図01 参照正常眼底

  2. 網膜の低形成と異形成

    1. 低形成 hypoplasia

      軸索ないし神経節細胞の減少を中心とした発生異常では,視神経乳頭の低形成と同じ カテゴリー
      それ以外の網膜構成エレメントの減少については 

    2. 異形成 dysplasia

      胎生期に起きる網膜発生・発育異常で,本来の網膜の形態になれず組織崩壊状態となる.程度問題ということで,
      鎌状網膜離・牽引乳頭・黄斑偏位に連続する変化となり得る.

    3. 先天網膜

      眼杯の内層と外層の融合の失敗,あるいは成長速度の不整合.

    4. 網膜欠損(コロボーマ coloboma

      ぶどう膜欠損(の結果)として扱う.

  3. 黄斑低形成 macular hypoplasia

    あるべき色素 dark macula がない.中心小窩の形成がない.発生の途中で分化を止めてしまったかのようである.

    図02 黄斑低形成 1

    中心小窩は痕跡のようである.輪状反射はどこへ  陥凹はどうした

    図03 黄斑低形成 2 図04 黄斑低形成oct

    黄斑低形成は無虹彩症に合併することが多い.PAX 6 遺伝子の異常による.この遺伝子の下流に錐体細胞の分化にかかわるCRX 遺伝子,双極細胞の分化にかかわるCHX 10 遺伝子がある.

  4. 黄斑偏位 macular ectopia,牽引乳頭 dragged disc

    耳側周辺方向への収縮が軽度であった場合,中心窩が引きずられたような所見になる.黄斑偏位である.乳頭黄斑間は離れるので外斜する(というか,角膜反射は鼻側に出る--いわゆる陽性 γである)が,視軸は正面である.

    図05 偏位 1 図06 偏位 2

    鎌状離と病態が重なる.

  5. 鎌状網膜falciform retinal detachmentablatio falciformis congenita ,牽引乳頭 dragged disc

    隆起した網膜が,視神経乳頭から下耳側周辺部やときに水晶体後まで続く.黄斑はひだ(皺襞)の中に巻き込まれ,眼底の他の部分は血管が減っているように見える.水晶体後面増殖組織などのために,狭閉塞隅角となるリスクがある.

    図07 鎌状

    先天網膜ひだは,第次硝子体過形成遺残,未熟児網膜症,滲出性硝子体網膜症,Norrie病,色素失調症(Bloch-Sulzberger症候群)など,硝子体網膜異形成の病型の(瘢痕組織のため,進行性ではないと考えられている)

  6. 有髄神経線維 medullated retinal nerve fiber

    遠心性の髄鞘形成は篩状板手前で終了するが,ときに網膜内にミエリン鞘・oligodendroglia が入り込む.astroglia が阻止損ねたか,胎生期すでに乳頭部や網膜面に存在していたか.

    図08 有髄 図09 有髄

    臨床的意味はほとんどない.

  7. 網膜血管の形状異常 malformations tortous retinal arteries

    動脈の蛇行も無害な先天異常だといいんだけど.また,ルール違反の変な分岐血管があったりする.

    図 loop1 図 loop2

    ここ で.

§ 血管病変  vasculopathy

  1. 高血圧網膜症 hypertensive retinopathy  チョッと詳しく

    病 態:
      @高血圧性変化はおもに可逆的な,縮性病変虚血性病変となる.血管内皮障害・網膜色素上皮障害による透過性亢進・血管閉塞は,網膜血管のみならず脈絡膜にも認められる.
     これらに因り,出血・浮腫・虚血所見がみられるのが 高血圧網膜症で,続発病変が修飾する.血管の所見のみで網膜器質病変がないときは 高血圧眼底という.定型的には若年高血圧で観察されることが多い.通常は次の生理的加齢変化と複合した所見となる.
      A動脈硬化性変化はおもに不可逆的な,器質変性加齢変性となる.生理的加齢変化が加速された状態とも言える.だいたい血管の所見のみであり,網膜()動脈硬化症というレベルが多い.

    症 状:
     基本病変では通常,無症状.般には高度な黄斑浮腫あるいは合併症による視力障害となる.

    分 類:(ここでは疾患の分類ではなく,高血圧所見と動脈硬化所見を組み合わせた程度分類である・・・念のため)
     @Keith-Wagener分類
     AScheie分類

    治 療:
     内科管理
     合併症対策

  2. 網膜動脈閉塞 arterial occlusion  チョッと詳しく

    病 態:
     動脈閉塞は,血流に乗った栓子(血栓や塞栓)が詰まるか,局部で生じた血栓に因って発症する.
     網膜内での網膜中心動脈の分布範囲は網膜内層であるから,ここに虚血性の浮腫・混濁を生じる.中心窩は網膜内層がなく白濁は生じないため赤色が残る.cherry red spotである.

    症 状:
     発症眼は,急激な視力低下を来たす.部分閉塞で中心窩領域をまぬがれると,視野障害となる.

    分 類閉塞部位で,
     @網膜中心動脈閉塞()central retinal artery occlusion視神経乳頭内篩状板部あるいはそれより近位で発症
     A網膜動脈分枝閉塞()branch retinal artery occlusion網膜内分岐部で発症

    治 療:
     およそ2時間以内に血行が再開しないと網膜は不可逆的な障害が起こるため,救急対応を要する.
     最初期治療は,眼球マッサージあるいは前房穿刺.動脈拍動をまね,あるいは眼圧を下げて血流再開をねらう.

  3. 網膜静脈閉塞 venous occlusion  チョッと詳しく

    病 態:
     交叉部(網膜内)や並走部(乳頭内)で動脈の圧迫を受けて静脈血流が障害され,網膜内でうっ滞・溢血したもの.静脈内血栓が生じることにも因る.
     閉塞部の末梢がわで,静脈の拡張・蛇行,表層性出血,ときに軟性白斑,網膜浮腫(とくに黄斑浮腫)を示す.時間が経過すると,浮腫の吸収過程で硬性白斑を生じる.蛍光眼底造影検査を行えば,罹患静脈毛細血管に拡張・蛇行・透過性亢進,等の所見が描出される.

    症 状:
     自覚症状は,罹患範囲の視野異常のほか閉塞部によって定しない.出血だけでは視野異常は軽度であるが,虚血を伴うと暗点が深くなる.
     中心視力への影響は,黄斑病変で決まる.短期的には網膜浮腫の影響が大きい.長期的には網膜面(硝子体境界面)の状態と中心窩胞変性の有無,これらによる視細胞損傷さらに新生血管発生あるいはその破綻による硝子体出血が加わる.

    分 類閉塞部位では,
     @網膜中心静脈閉塞()central retinal vein occlusion乳頭内で発症
     A網膜静脈分枝閉塞()branch retinal vein occlusion網膜面動静脈交叉部で発症

    病態では
     @出血型 hemorrhagic type表層出血(時に深部まで)と浮腫が強い.
     A虚血型 ischemic type毛細血管閉塞が強い.浮腫(透過性亢進)は強い時とそれほどでもない時とがある.
      虚血の程度によっては,新生血管発生(増殖病変)の危険性が増す.

    治 療:
     レーザー光凝固,そのた

  4. 糖尿病網膜症 diabetic retinopathy  チョッと詳しく

    病 態:
     高血糖により毛細血管が故障する(細小血管症).臨床的には血管の変形,閉塞,透過性亢進が基本変化となる.結果が,毛細血管瘤・白斑・出血であり.これに増殖病変(新生血管発生)が加わり,多彩な所見となる.
     蛍光眼底造影所見が重要な情報を示す.無潅流域と透過性亢進血管を描出するためである.

    症 状:
     自覚症状(視力障害)は,網膜病変にとどまる限り極めて乏しい.視力障害の原因は,主に黄斑症(浮腫・網膜の荒廃)と増殖網膜症(硝子体出血・網膜)による.

    分 類:
     単純網膜症 simple or bachground retinopathy
     増殖網膜症 proliferative retinopathy

    治 療:
     内科管理
     無潅流域・透過性亢進・新生血管に対してはレーザー光凝固
     遷延する硝子体出血・増殖網膜症には手術

  5. 未熟児網膜症 retinopathy of prematurity  チョッと詳しく

    病 態:
     未発達網膜が保育器内の酸素投与により血管閉塞をきたし,そのご酸素濃度の低下につれ血管の異常増殖を起こす.

    症 状:
     古典的には,後水晶体線維増殖(retrolental fibroplasia)をきたし白色瞳孔を示す.両眼性である.
     在胎8か月以前・・30週以前,生下時体重1500g以下で急増する.27週以下での発症は90%,26週未満~22週では必発 且つ重症化する.

    分 類:
     @活動期
     A瘢痕期

    治 療:
     レーザー光凝固が適応.冷凍凝固でもかなり代用可能.急速に離が進行する型や瘢痕期では硝子体手術による.

  6. 血管腫 hemangioma あるいは血管腫症 angiomatosis あるいは capillary hemangioma 【 チョッと詳しく

    基本病変は,@毛細血管の異常・・・・血管拡張,透過性亢進,出血,など A毛細血管の増殖・腫瘍化,など B大血管の形状変化・・・・「つる」状,「ループ」状,など.

  7. 中心性漿液性脈絡網膜症 central serous chorioretinopathy  チョッと詳しく

    病 態:
     黄斑部網膜に円形の隆起をきたす疾患である.この隆起は浮腫液の貯留であり,網膜色素上皮と視細胞層との間に溜まる.従って,続発性網膜離に相当する.蛍光眼底造影検査により,脈絡膜から浮腫液の移動すなわち漏出点が証明される.この漏出点が,色素上皮細胞障害を示す.
     病態の本質は脈絡膜疾患であるが,習慣的に網膜疾患として扱う.古典的病名は 中心性網膜炎(retinitis centralis)というが,現時点でも通用する.

    症 状:
     視力障害,おもに比較中心暗点.これによる視感度・色覚の変調.ほかに,小視症,変視症,など.遠視化もポイントである.
     30~40代の男性に多い.年齢的に老視の自覚開始年齢であることで,近見障害が意外に強かったりする(調節力にも影響があるらしい)

    分 類:
     @増田型狭義 中心性網膜炎
     A異型中心性網膜炎として
       多発性後極部網膜色素上皮症(MPPE;multiple posterior pigment epitheliopathy),新生血管黄斑症,・・

    治 療:
     レーザー光凝固が適応可能.般的にはストレス,心労,過労を避ける.

  1. 炎 症

    病 態:網膜の構成は血管要素と神経要素(と,グリア要素)であることで,@血管炎として,あるいはA神経炎として発症する.次項は網膜血管炎としての概要である.(グリアを含めた)神経炎は視神経炎の範疇となる.網膜炎脈絡膜炎は,ぶどう膜炎の範疇となる.

§ 炎 症 inflammations

  1. 若年性再発性網膜硝子体出血 (hemorrhagia retinae et corpolis vitrei recidiva juvenum,あるいは
    Eales病  症例写真A  症例写真B

病 態:静脈壁へのリンパ球や形質細胞の浸潤(静脈炎

症 状:

分 類:

治 療:

図10 いーるず
  1. 大動脈炎症候群 (aortitis syndrome,あるいは
    高安病 Takayasu disease,脈なし病 pulseless disease   症例写真 雑誌記事

病 態大動脈とその主要分枝および肺動脈・冠動脈に,狭窄・閉塞または拡張病変を起こす,非特異性炎症性疾患である.病変部位により症状は多様となる.
初期には形質細胞及びリンパ球が中膜と外膜に浸潤する.その後び漫性壊死・増殖性炎症(肉芽腫性病変)となる.男:女1:9ほどとか.

症 状@眼症状過性あるいは持続性,進行性の視力障害.
 A頭部虚血症状めまい,頭痛,失神発作,片麻痺.
 B上肢虚血症状脈拍左右差〜欠損,易疲労感,指のしびれ感.
 C全身症状高血圧,発熱,倦怠感,易疲労感,頸部リンパ節腫脹,結節性紅斑.
 D炎症反応,IgG・IgAの増加,C3・C4の増加,HLA-B52 / B39などが陽性

分 類:

治 療:

図11 脈なし

難病医学研究財団 難病情報センター

  1. 樹氷状血管炎 (    症例写真

    病 態:

    症 状:

    分 類:

    治 療:

図12 樹氷
  1. SLE,抗リン脂質抗体症候群,そのた

    病 態:

    1. SLE(全身性エリテマトーデス):閉塞性血管炎.
       般的には出血・軟性白斑が中心となるが,重症では動脈閉塞を来す.

    2. 抗リン脂質抗体症候群閉塞性血管炎.
       ただし,動脈閉塞から静脈閉塞まで多彩である.

図13 SLE
  1. IRVAN 症候群 (idiopathic retinal vasculitis, anuerysms, neuroretinitis    症例写真

    病 態:

  1. 感染性炎症  ぶどう膜炎 眼内炎へ

と,いうことで,変性・腫瘍性病変へ.

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2017