脳血管内治療は、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤、脳梗塞を引き起こす頚動脈および頭蓋内血管の狭窄、さらには脳・脊髄の血管奇形などの脳血管障害を開頭することなく、血管内部から治療する新しい治療方法です。X線装置による透視下に細いマイクロカテーテルと呼ばれる管を大腿のつけねから頭蓋内の血管まで進めて治療を行います。従来の開頭術では治療が難しかった疾患が、脳血管内手術で治療が可能になってきています。帝京大学医学部脳神経外科では、これまで行ってきた開頭による手術に脳血管内手術を治療の選択肢に加えることにより、最先端の治療を皆様に提供していきます。
脳動脈瘤(くも膜下出血の主な原因)に対して、プラチナコイルを用いて塞栓術を行います。くも膜下出血をきたした破裂脳動脈瘤に対する塞栓だけでなく、偶然発見された未破裂脳動脈瘤に対する出血予防の治療も行います。開頭クリッピング術を専門とするチームと連携して個々の症例ごとに最も適切と思われる治療方法を選択しています。頭蓋内ステントを併用したコイル塞栓術も行っています。
頚動脈および頭蓋内血管の動脈硬化性狭窄病変に対してバルーンやステントを用いて血管形成術を行います。動脈硬化性の血管狭窄はアテローム血栓症と呼ばれており、生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、肥満)などが原因により生じた全身性の疾患です。脳卒中だけでなく心筋梗塞などの冠動脈病変、大動脈や下肢末梢血管の狭窄病変を併発している場合も少なくなくありません。当院では、特定機能病院としての利点を最大限に生かし血管外科・循環器内科・心臓血管外科と密な連携をとって治療にあたっています。
急性期の脳卒中治療にも積極的に対応しています。脳梗塞の場合、発症より3時間以内であれば適応症例にはtPA静注療法を行います。これは内科的治療であり当院神経内科と連携して治療にあたっています。tPA静注が適応ではない症例や発症より3−6時間が経過している症例のうち局所線溶療法が適応と考えられる場合には、閉塞血管にカテーテルを直接誘導して血栓溶解薬を局所的に投与し血行再建術を行います。MERCI・Penumbraという機械的血栓除去用の器材を使用した超急性期手術も行っています。
脳・脊髄動静脈奇形や硬膜動静脈瘻に対してはプラチナコイルと接着性の液体塞栓物質を併用して異常血管を閉塞します。開頭術・放射線治療を含めた集学的治療を行っています。
脳腫瘍の開頭術の前処置として腫瘍血管を塞栓します。悪性脳腫瘍に対して選択的に化学療法を行います。
骨粗鬆症や腫瘍が原因で生じた脊椎(胸椎・腰椎)の圧迫骨折に対して、経皮的に骨セメントを注入して痛みを取り除きます(経皮的椎体形成術)。安静のみでは疼痛がなかなか改善されない急性期の圧迫骨折を治療対象としています(原則として保険外治療)。
平成21年 | 平成22年 | 平成23年 | ||||||
脳動脈瘤コイル塞栓術 |
64 | 91 | 87 | |||||
頚動脈ステント留置術 |
32 | 41 | 33 | |||||
血管拡張術 |
11 | 20 | 11 | |||||
硬膜動静脈瘻・脳動静脈奇形 |
5 | 5 | 8 | |||||
経皮的椎体形成術 | 17 | 11 | 10 | |||||
その他 |
6 | 3 | 5 | |||||
合計 |
135 | 171 | 154 |
(注1)経皮的椎体形成術は脳血管内治療ではありませんが、X線透視下に行う低侵襲治療であり、脳血管内治療グループで行っているので手術実績に含めています。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |||||||||||||
午前 | 午後 | 午前 | 午後 | 午前 | 午後 | 午前 | 午後 | 午前 | 午後 | 午前 | ||||||||
(准教授) 上野俊昭 |
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上野 俊昭 (うえのとしあき) 平成元年東京大学医学部医学科卒。東京大学医学部附属病院、東京警察病院脳神経外科での勤務を経て、カリフォルニア大学サンディエゴ校助教授。平成16年9月より帝京大学医学部脳神経外科講師。平成20年4月より同准教授。これまで約1000例の脳血管内手術の経験を有する。 日本脳神経外科学会専門医、日本脳神経血管内治療学会専門医、医学博士 |
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内藤 雄一郎 (ないとうゆういちろう) 平成11年秋田大学医学部卒。平成16年秋田大学大学院医学研究科修了。秋田大学医学部脳神経外科を経て平成21年より帝京大学医学部脳神経外科講師。 日本脳神経外科学会専門医、日本脳神経血管内治療学会専門医、医学博士 |
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西山 恭平 (にしやまきょうへい) 帝京大学医学部卒。帝京大学医学部神経内科に入局。平成19年より同大学院。平成24年4月より脳血管内治療専門医を目指して帝京大学医学部附属病院脳神経外科後期研修医となる。 日本内科学会認定医 |
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Last update: 2012-09-09