研究紹介Our research


レセプトデータによる薬剤耐性菌サーベイランスの評価(谷原 真一教授)

一般的に、日本の感染症のサーベイランスは、国が医療機関の届出に基づいて流行状況を把握します。そのため、届出がきちんと行われない場合は、得られた情報が実際の流行状況を反映しないことになります。一方、レセプトは保険診療であれば必ず保険者に提出されることから、レセプトとサーベイランスのデータを比較することで、サーベイランスの信頼性を検証することができます。そこで、レセプトを用いて厚生労働省院内感染対策サーベイランス(Japan Nosocomial Infections Surveillance、以後JANIS)の信頼性を評価し、国際学術誌 Epidemiology & Infectionに発表した結果を紹介します。

今回の研究では、複数の健康保険組合(2012年3月末日の被保険者・被扶養者総数約148万人)の2012年4月〜2013年3月診療分レセプトデータから、抗(methicillin-resistant Staphylococcus aureus, 以後MRSA)薬(バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシン、リネゾリド、ダプトマイシン)が静注された全ての入院患者をDiagnosis Procedure Combination(DPC)レセプト及び医科入院レセプトから抽出し、条件に該当する患者をMRSA患者と定義しました。さらに、年齢階級別被保険者・被扶養者数を分母として年齢階級別MRSA罹患率を算出しました。JANISについては、全入院患者部門の2012年分(1〜12月)年齢階級別MRSA報告患者数と推計人口(2012年4月1日現在)を用いて年齢階級別罹患率を算出しました。

その結果、年齢によるMRSA罹患率の変化は両者ともほぼ同じ推移であり、年齢階級別の罹患率比はいずれの年齢階級でも10程度でした(図1)。このことから、MRSA患者の年齢はJANISへの届け出に影響してないと考えられました。感染症サーベイランスとしてのJANISの信頼性を評価する上でレセプトを情報源とすることは有用と考えられます。

 


【発表論文】
Tanihara S, Suzuki S. Estimation of the incidence of MRSA patients: evaluation of a surveillance system using health insurance claim data. Epidemiol Infect. 144(11):2260-2267, 2016. [More information]

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