研究紹介Our research


日本の手術診療報酬は資源利用を反映していない(中田 善規教授)

日本の医療は国民皆保険制度下で過去半世紀以上にわたって行われてきました。日本のすべての医療サービスの価格は、診療報酬という形で全国一律に決定され、この価格改定は中央社会保険医療協議会(中医協)で2年に1度行われます。しかし、手術診療報酬については、この出来高制診療報酬がどの部分の費用をカバーするのかが明確にされていませんでした。そのため、外科医には診療報酬が不公平であるという印象を与えているし、この価格体系が適切なのかどうかも不明でした。そこで、日本の手術診療報酬は資源利用の観点から見て妥当であるかを検証するために、外科系の診療科間で手術の効率性を評価し、学術雑誌International Journal of Health Servicesに報告した結果を紹介します。

この研究では、帝京大学病院中央手術部で2013年4月1日から9月30日までに行われた手術のデータを収集し、データ包絡分析を用いて各外科医の効率性を算定しました。各外科医の効率性スコアを計算するためのインプットは@助手を務める医師の人数、A皮膚切開から閉鎖までの手術時間と定義し、アウトプットは各手術の診療報酬としました。このインプットとアウトプットを外科医ごとに研究期間を通して合計し、効率性スコアを求めました。このスコア(0〜1点)は、得点が高いほど効率性が良いことを意味します。そのスコアを外科各科で集積し、Kruskal-Wallis法を用いて各科間のスコアの比較を行いました。

103人の外科医による2825症例を検討した結果、外科各科の効率性スコアの違いは統計学的に有意であり(p = 0.0001)、科によって手術の効率性は異なることがわかりました(下図)。このことから、日本の手術診療報酬は資源利用を反映していないことが示されました。

図. 外科各科での効率性スコア
 


【発表論文】
Nakata Y, Watanabe Y, Otake H, Nakamura T, Oiso G, Sawa T. The Japanese surgical reimbursement system fails to reflect resource utilization. International Journal of Health Services. 45(4):801-809, 2015. [More information]

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