研究紹介Our research


健康づくりのためのメッセージの受け止め方と反応は人によって違う?
(福田 吉治教授)

健康増進や疾病予防を目的として、さまざまな健康づくりのためのメッセージ(健康メッセージ)が一般の方々向けに使用されていますが、健康メッセージの受け止めやその反応は、性別、年齢などの個人の特性によって異なることが予想されます。しかしながら、日本においてこの点は検証されていませんでした。そこで、人々がどのような健康メッセージに効果があると認識しているかを検証し、所得や学歴等の社会経済的要因を含めて、その特性に応じた認識の違いを明らかにし、日本公衆衛生雑誌に報告しましたので、主な結果を紹介します。

 今回の研究では、山口県に在住する成人(30〜59歳)1200人を対象として質問紙調査を行いました。山口県の二つの市から対象者を無作為に抽出し、質問紙を郵送して、回答を求めました。質問は、個人特性(性別、年齢、婚姻状況、学歴、世帯収入等)、健康メッセージの効果の認識などにより構成しました。健康づくりのテーマは、禁煙の勧奨、節酒の勧奨、がん検診の受診勧奨、減量(体重減少)の勧奨とし、それぞれに複数のメッセージを示し、もっとも効果があると思うものを選択してもらいました。分析は、個人特性とメッセージの選択の関係を検討しました。

 調査票は445名より回答がありました(回答率37.1%)。全体として、「健康影響」(例:喫煙の健康被害)を示すメッセージに効果があると回答したものがもっとも多い結果となりました。この健康影響に関するメッセージへの認識は、性別や年齢に加えて、婚姻状況、学歴、収入によって異なることが示されました(下図)。すなわち、禁煙の勧奨では、「受動喫煙」による影響に関するメッセージに最も効果があると認識した人は低学歴者と比べ、高学歴者に多く認められました。節酒の勧奨では、飲酒が「依存症」の原因になるとのメッセージに最も効果があると答えた人は高収入者よりも低収入者に多い結果となりました。がん検診の受診勧奨では、「家族のため」に受診勧奨することは最も効果があると答えた人は低学歴者に多く、市町の検診はわずかな「自己負担」で受診できるというメッセージは効果があると回答した者は低収入者で多くなりました。

 

 これらの結果から、勧奨する予防行動によって傾向に違いは認められましたが、性別や年齢、婚姻状況、学歴、収入によって健康メッセージの効果の認識は異なることが明らかになりました。このことから、健康づくりのメッセージの提供にあたり、社会経済的要因を含む個人特性を考慮し、メッセージの内容を選択することが、健康増進や疾病予防の行動を効果的に促すと考えられます。


【発表論文】
福田吉治, 林辰美. 健康づくりに関するメッセージの効果認識の関連要因:社会経済的要因に注目して. 日本公衆衛生雑誌 62(7): 347-356, 2015 [More information]


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