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SPH授業の一幕

2021.11.23

ヘルスコミュニケーション学講義でアドボカシー・エージェントに聴く
~ハームリダクションの概念を広める~

アドボカシーの基本については必修科目「保健政策・医療管理学概論」で学びますが、選択科目「ヘルスコミュニケーション学/リーダーシップマネジメント特論」ではさらに実践家のお話を聴く機会があります。今年度の「政策形成とアドボカシーのコミュニケーション」の回では、日本薬物政策アドボカシーネットワーク事務局長の古藤吾郎先生にお越しいただきました。

日本薬物政策アドボカシーネットワーク(NYAN)は、薬物使用がある人の立場で権利擁護、つまりアドボカシーを行っています。そのミッションは薬物使用を依存症(アディクション)に限定せず、司法・医療分野と同様に、薬物使用がある人とその身近にいる人の健康と福祉・尊厳と権利を大切にする社会を実現し、薬物・ドラッグについて、現実的・科学的・合理的な理解が深まり、人々に差別と偏見をもたらすスティグマが解消された社会を実現し、薬物使用がある当事者が中心となって、アドボカシー活動ができる社会を実現することです。

NYANの多くの活動をご紹介いただいた中でも、特にハームリダクション(Harm reduction)の概念の重要性が心に残りました。まだ耳慣れない概念かもしれませんが、もともとは害やダメージを低減することであり、ゼロだけを目指すのではないということです。ハームリダクション ・インターナショナルの定義によると、ハームリダクションとは、薬物使用・薬物政策・薬物に関係する法律が、健康・社会・司法に及ぼす悪影響を最小限にすることを目指すプログラム・政策・実践だそうです(NYANホームページより)。

古藤先生は車のシートベルトを例として挙げられました。
車の運転によるケガや死を防止するためにできる手段がいくつかあります。例えば、一つ目はすべての人に車の運転を禁ずること、二つ目は、ある日は運転しない、ある日は運転するからシートベルトする、と選択することです。薬物使用の事象に置き換えると、一つ目の手段は薬物の使用を禁ずることであり、二つ目の手段は、使用しないときもあっていいし、注射で使用するときがあるなら、清潔な注射器を使うことができる、というのがハームリダクションです。

ハームリダクションのアプローチでは、行動を禁ずるのではなく、本人が望む現実的・実用的な支援を受けられることが重視されます。司法が強制的に介入することや、医療システムに無理やり組み込ませようとする向き合い方ではなく、地域やコミュニティでのサポートを受けられることで、誰も取り残されない社会にチェンジできるのがゴールです。


 

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