公衆衛生とは

公衆衛生とは

公衆衛生とは、「公衆ノ生ヲ衛ル」ことです。 
公衆(つまり人々の集団やみんな)の生命を守ること、生活や生きることを守ることです。

英語ではPublic Health(パブリックヘルス)と言います。

日本語の「衛生」という言葉は、明治時代に活躍した医師であり官僚の長与専斎が、Hygienの翻訳とした語として知られています。

予防医学という言葉もあります。予防ということばが示す、一次予防(健康増進、病気発症予防)、二次予防(早期発見・早期治療)、三次予防(社会復帰やリハビリテーションなど)のすべての側面について、集団を対象に研究したり、国や地域、職域など、多様な場で人々のための予防に取り組んでいるのが、公衆衛生です。

 

公衆衛生学と医学の違い

公衆衛生学も医学も、目指すところは同じです。人の生命や生きることを守ることです。
そして、もちろん公衆衛生学と医学は、密接に関係しています。でもそのアプローチや治し方が異なります。

医学では主に、一人ひとりの患者さんを対象にして、その人と向き合い、その病気やけがを治します。
公衆衛生学は、人々の集団を対象にして、その病気やけがから守り、それらを予防します。

医学で対象にするのは、既に病気になったり、けがをしたりした患者さんです。
公衆衛生で対象にするのは、人々の集団で、患者さんの集団であることもあれば、健康な人々の集団であることもあります。健康な人々の集団を対象にするときには、まだ病気になっていない人の病気を予防したり、健康をますます増進するためにはたらきかけます。

医学では、主に医師や看護師を含む医療従事者がチームを組んで、患者さんとその家族、ときには地域の関係者と共に、病める人を治療して支えます。

公衆衛生学では、医療従事者の中でも、行政や産業衛生の現場に勤める医師や看護師、保健師などが活躍しています。それと共に、医療従事者でもそうでなくても、健康にかかわる行政機関、地域社会や企業、マスコミ、政治家などを巻き込んで、その課題の解決策を発見して社会と人々を治し、病気を予防します。

ただ、医学と公衆衛生は、決してすれ違っているわけではありません。

医学の分野のさまざまな病気のガイドラインには、公衆衛生の基本である、疫学の研究成果が科学的根拠(エビデンス)として活用されています。また、医学の世界で開発される医薬品や医療機器の開発に欠かせない臨床試験には、公衆衛生の基本でもある疫学や生物統計学の知識が不可欠です。さらに、患者さんがアクセスしやすい医療機関の配置や、金銭的にも医療が受けやすい保険や医療制度をつくることなどは、法律や政策が基盤になりますから、公衆衛生の力が活かされています。

他方、公衆衛生の側にとっては、しばしば医療機関での臨床上の疑問をきっかけに、医療機関の患者さんの集団のデータを用いた疫学調査などを行うことがあります。また、国や地方の行政、保健所などで得られた健康に関する住民のデータを用いて、人々を病気から守り、病気の人を助けることに従事しています。

ですから、医学と公衆衛生学は、同じ目的を持ちながら共に活動しています。その方法や現場を共通に持ちながら、お互いに支え合っているのです。

でも、公衆衛生は、思いのほかダイナミックな分野だと思いませんか?人々の生命を守る
現場はそこかしこにあります。あなたの専門を活かして、あるいは、新しいことを学びながら、一緒に公衆衛生、やりませんか?

 

※帝京SPH ニュースレター 第1号「特集:公衆衛生って何ですか?」もご参照ください。

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